ABSTRACT 828(P1-12)
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発癌研究におけるトランスジェニックマウス(MutaMouse)の有用性に関する検討(第7報): MutaMouse各臓器中の導入lacZ遺伝子におけるbenzo[a]pyreneによって誘発された変異スペクトル: 羽倉昌志, 園田二朗(エーザイ(株)安全性研究所)

Mutational spectrum of the mutated lacZ transgenes in the transgenic mouse (MutaMouse) organs induced by benzo[a]pyrene: Atsushi HAKURA, Jiro SONODA (Drug Safety Research Laboratories, Eisai Co., Ltd.)

【目的】 lacZ遺伝子導入トランスジェニックマウス(MutaMouse)にbenzo[a]pyrene (BP)を投与し、各臓器に誘発された変異頻度の強さと発癌標的臓器とは必ずしも相関しないことを私たちはすでに見い出した。今回、その要因を探る目的でlacZ遺伝子上に生じた各臓器における変異スペクトルを比較解析したので報告する。
【方法】8週令雄性MutaMouseにBP (125 mg/kg)を5日間経口投与し、最終投与後14日目に屠殺したマウスの各臓器についてpositive selection法により変異プラークを得た。得られた各変異プラークのlacZ遺伝子変異をPCRによってDNAを増幅した後、塩基配列の解析を行った。調べた臓器は発癌標的臓器である前胃、脾臓ならびに非標的臓器である大腸、腺胃とした。
【結果および考察】 発癌標的臓器である前胃と脾臓は共にlacZ遺伝子の変異スペクトルはよく似ていた。すなわち、各々、GC->TA変異が55%と50%、欠失変異が20%と21%の割合で見い出されたが、GC->AT変異は見られなかった。一方、調べた2つの非標的臓器の変異スペクトルは各々標的臓器とは異なっていた。すなわち、大腸ではGC->TA変異が18%、 GC->AT変異は24%、欠失変異が29%であり、腺胃ではGC->TA変異が44%、 GC->AT変異は25%、欠失変異が約6%の割合で認められた。これらの結果から、発癌には各臓器に生じた変異の強さのみではなく、変異スペクトルも一要因であることが示唆された。
共同研究者:筒井美枝, 見上 孝, 築舘一男