ABSTRACT 829(P1-12)
環境ホルモンの一種であるビスフェノールAは、シリアン・ハムスター胎仔細胞に形質転換と染色体数的異常ならびにDNA付加体形成を誘導する:八木英一、田村友起子、長谷川紅子、筒井健機(日本歯大・歯・薬理)
Bisphenol-A, an environmental estrogen, induces cellular transformation, aneuploidy and DNA adduct formation in cultured Syrian hamster embryo cells. : Eiichi YAGI, YukikoTAMURA, Koko HASEGAWA, Takeki TSUTSUI (Dept. of Pharmacol., Nippon Dental Univ., Tokyo)
【目的と方法】Polycarbonateやepoxy resinなどのモノマーの原料であるbisphenol-A( BP-A) は、ヒトにがん原性を示すdiethylstilbestrolと類似した化学構造を有している。そこで、BP-Aのがん原性と遺伝毒性を培養細胞系で評価する目的で、培養シリアン・ハムスター胎仔 (SHE) 細胞にBP-Aを作用させ、細胞の形態形質転換誘導能、遺伝子突然変異誘導能、染色体異常誘導能およびDNA付加体形成能を調べた。
【結果と考察】BP-Aの50〜200μMを48時間作用させることにより、SHE細胞に形態形質転換が誘導されたが、Na+/ K+ ATPase遺伝子とhprt遺伝子における突然変異の誘導は認められなかった。同濃度のBP-Aを72時間作用させたとき、二倍体近傍で染色体の数的異常が認められたが、構造異常は検出されなかった。また、同濃度の24時間作用により、対照群の細胞にはみられなかったDNA付加体の形成が認められた。
以上の結果は、BP-Aが培養哺乳類細胞に形質転換活性や遺伝毒性を持つことを示している。このことは、BP-Aには、がん原性があることを示唆している。