ABSTRACT 834(P1-12)
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アスベストによる細胞遺伝毒性誘発機構について:竹内亨,中島円,森本兼曩(阪大・医・環境医学)

Mechanisms of cytogenotoxicity induced by asbestos:
Toru TAKEUCHI,Madoka Nakajima,Kanehisa MORIMOTO(Dept. of Hygiene and Preventive Medicine, Osaka University Schoolof Medicine)

アスベストは悪性中皮腫を誘発するヒト発がん物質である。しかしアスベストがヒト由来細胞に著明な遺伝毒性を誘発したという報告はほとんど見られない。我々はアスベストによるDNA損傷誘発には、標的細胞の貪食能が必要であると報告してきた。今回は貪食能を有するヒト中皮腫細胞(MSTO211H)と貪食能を有さないヒト白血病細胞(HL60)を用い、アスベストによる細胞遺伝毒性(多核細胞)誘発機構について検討した。
 アスベストには発がん性の高いcrocidoliteを用い、標的細胞にはATCCより購入したMSTO-211H、JCRRBから頂いたHL60を用いた。両細胞とも10%FCS並びに抗生物質を含有するRPMI1640で培養した。多核細胞出現頻度は、標的細胞を24時間培養後crocidoliteを添加し、更に24時間培養後細胞を固定し、アクリジンオレンジで染色し蛍光顕微鏡で観察・定量した。Crocidoliteあるいは蛍光標識ビーズの貪食の確認には、共焦点レーザー顕微鏡を用いた。
 MSTO211Hは分化誘導等の特別な処理なしに、蛍光ビーズ並びにcrocidoliteを貪食した。CrocidoliteはMSTO211Hに濃度依存的に多核細胞を誘発した。一方貪食能を持たないHL60ではcrocidoliteによる多核細胞出現頻度の増加が観察されなかった。
 Crocidoliteは悪性中皮腫細胞に多核細胞を誘発した。多核細胞誘発には標的細胞の貪食能が必要で、アスベスト発がんにおける標的細胞の貪食能の重要性が示唆された。