ABSTRACT 836(P1-13)
マウス肝癌細胞株におけるVL30の発現量と癌形質の相関 :安本博晃、隅井雅晴、福田三郎、高橋護、神谷研二(広島大・原医研・分子生体制御)
Correlation with expression of VL30 and malignant feature of mouse hepatocellular carcinoma cell lines :Hiroaki YASUMOTO, Masaharu SUMII, Saburo FUKUDA, Mamoru TAKAHASHI, Kenji KAMIYA (Dept. of Develop. Biol. Oncol., Res. Inst. Radiat. Biol. Med., Hiroshima Univ.)
【目的】我々は、B6C3F1マウスに放射線誘発した肝癌から樹立した肝癌細胞株では高頻度に第4染色体のLOHが存在することを明らかにした。さらに、肝癌細胞の第4染色体でのgenotypeと軟寒天培地でのコロニー形成能及び同系マウスへの可移植能との関係を検討した結果、第4染色体のgenotypeと癌の造腫瘍能に相関を認めた。本実験では、これら造腫瘍能を有する肝癌細胞株で発現量の変化しているmRNAを同定する目的で、differential display法による解析を行った。【方法と結果】(1)軟寒天培地でコロニー形成肝癌細胞に強発現するmRNAをdifferential display法により同定し、これより得られたDNA fragmentを用いてcDNAライブラリーをスクリーニングした。得られたcDNAの塩基配列を決定した結果、この遺伝子は、5.6kbのレトロトランスポゾンVL30であった。(2)VL30の臓器別発現を検討したところ、副腎、卵巣及び精巣では発現が非常に強く、肺、腎臓、心臓及び乳腺では弱く、その他の臓器ではほとんど認められなかった。【考察】VL30は、LTR内のU3領域の塩基配列によりサブグループに細分化され、この領域により転写、及び、臓器での発現特異性が制御されている。VL30がコロニー形成肝癌細胞で強発現する原因を解明するため、U3を用いたゲルシフト解析を行いVL30の発現を制御する転写因子の同定を行っている。