ABSTRACT 838(P1-13)
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放射線照射リンパ球での遺伝的不安定性の誘導とKu 70, TRF-1蛋白質とテロメラーゼの発現 : 田中公夫、中西弥恵、久藤しおり, 麻生博也、鎌田七男(広島大・原医研・分子細胞遺伝)

Radiation-induced delayed genetic instability in human lymphocytes and expressions of Ku 70 and TRF-1 protein and telomerase : Kimio TANAKA,, Mitue NAKANISHI, Shiori KUDO, Hiroya ASOU, Nanao KAMADA (Dept. of Cancer Cytogenet., Res. Inst. Rad. Biol., Hiroshima Univ.)

【目的】放射線による癌の発生は、照射を受けた細胞に照射後、遺伝的不安定性が誘導される事が原因であると考えられる。これまで、ヒト骨髄細胞とリンパ球で照射後、遺伝的不安定性が生ずることを確認した。遺伝的不安定性を持つ細胞でのKu 70とTRF-1蛋白質の遺伝的不安定性誘導への関与を検討した。
【対象と方法】照射直後の解析には健常人のリンパ球を、照射後の遺伝的不安定性の解析にはα、γ線照射リンパ球より樹立したB細胞株を用いた。
【結果と考察】γ線照射直後の細胞でのKu 70、TRF-1蛋白質とテロメラーゼの発現様式と、照射後、遺伝的不安定性を持つ細胞株のγ線再照射後の発現様式とを比較観察した。照射直後にはKu 70、TRF-1ともに照射線量に比例して増加し,TRF-1はG2//M期に高い発現がみられた。テロメラーゼも同様な発現を示した。しかし、照射後遺伝的不安定性を持つ細胞株では、照射直後とは異なり、G2期依存的にKu 70の低発現とTRF-1の高発現がみられた。この時期には染色体異常を持つ細胞が増加し、細胞の増殖低下が観察された。照射直後、Ku 70蛋白質はABL, p21と結合していたが、TRF-1とは結合しておらず、遺伝的不安定性を持つ細胞株でも同様であった。これらの事実は放射線照射後の遺伝的不安定性の誘導にKu 70とTRF-1蛋白質が関与している可能性を示している。