ABSTRACT 839(P1-13)
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ヒト正常線維芽細胞とその不死化細胞の2次元電気泳動による蛋白質の解析:難波正義, 宮崎正博, 大橋龍一郎(岡山大医・分子細胞研・細胞生物)

Two-dimensional gel electrophoretic analysis of the protein changes after immortalization of human cells: Masayoshi NAMBA, Masahiro MIYAZAKI, Ryuichiro OHASHI (Dept. Cell Biol., Inst. Mol. Cell. Biol., Okayama Univ. Med. Sch)

[目的]細胞の不死化段階は発癌の律速段階である.ヒト正常細胞はきわめて不死化し難く老化する.しかし,いったん不死化すると比較的容易に癌化する.従って,不死化の段階の解析はヒト細胞の発癌機構を知るうえできわめて重要である.今回は,ヒト細胞の不死化前後での細胞蛋白質の発現の差を2次元電気泳動で解析した
[研究方法]細胞から細胞溶解液で蛋白質を抽出し,1次元はImmobiline DryStrips (pI: 4.0-7.0)で,2次元は14% SDS-PAGEで泳動した.泳動後,銀染色で蛋白質のスポットを観察した.蛋白質の同定には,特異抗体,35メチオニンラベル,アミノ酸配列の解析,などを行った.
[研究結果]細胞の不死化後いちじるしく減少する蛋白質としてトランスフェリン(Tf)を見いだした.そして,ヒト正常線維芽細胞はTfを培養条件下で合成していること,細胞内で合成されたTfは微小管に結合して存在し,培地より取り込まれたTfとは細胞内での局在が異なることを見いだした.細胞内Tfが細胞の不死化に伴い減少する生物学的意味として,不死化細胞は鉄をキレートする能力が低下し,鉄の関与するラジカルに感受性になり,遺伝子の不安定性がおこる(著しい染色体の変化)可能性が考えられる.Tf以外の蛋白質の変化についても述べる.