ABSTRACT 919(P3-2)
BBN誘発ラット膀胱腫瘍に対する各種漢方薬の抗プロモ−ション作用及び病理学的側面からの検討:佐藤大祐、澤村良勝、松島正浩 ( 東邦大、第2泌 )
Inhibition of urinary bladder tumors induced by N-butyl-N-(4-hydroxybutyl)-Nitrosamine in rat by each Kampo and histologic examination : Daisuke SATO , Yoshikatsu SAWAMURA ,Masahiro MATSUSHIMA ( Dep. of 2nd Urol.,Toho Univ. of Med.. )
目的) 膀胱癌の発生頻度は増加傾向にあり、その治療成績は依然として不良である。第一次予防並びに術後の再発予防の観点を含めた新しい治療法が模索されている。以上の点を踏まえ、予防薬としての可能性を漢方薬に求め、BBN [N-butyl-N-(4-hydroxybutyl) Nitrosamine] 誘発ラット膀胱腫瘍に対する各種漢方薬の抗腫瘍効果について検討した。
方法) 7週令の雄性Wistar系ラットを各々15匹ずつ7群に分け、0、05%BBN含有水道水を5週間飲水させ、6週目より、水道水を飲水させた。各群とも最初の5週間は通常の固形飼料で飼育し、6週目からは、T群(対照群)には通常の固形飼料を与え、U群からZ群は、各々0、1%TJ-9(小柴胡湯)・1、0%TJ-9(小柴胡湯)・0、04%TJ-17(五苓散)・ 0、43%TJ-17(五苓散)・0、13% TJ-114(柴苓湯)・1、33% TJ-114(柴苓湯)を含有した固形飼料を与えた。40週間飼育した後、膀胱腫瘍の発生の有無、1匹あたりの腫瘍数を調べ、続いて腫瘍径を測定し、体積を概算した。また、異型度及び浸潤度など、病理学的側面からも、検討を行った。
結果) 各群間において実験終了時のラットの平均体重は有意の差を認めなかった。ラット生存数は、 各群とも15匹ずつであった。1匹当たりの腫瘍数について、T群(対照群)と比較して、X群で有意差を認めた(p<0.05)。1腫瘍当たりの平均体積についてはW群(p<0、01)・X群(p<0、01)・Y群(p<0、01)・Z群(p<0、01)で有意差を認めた。総腫瘍体積は、T群と比較して、X群で約1/12と顕著な抑制効果を認めた。
結語) 五苓散、柴苓湯がBBN誘発ラット膀胱腫瘍に対し、腫瘍の増殖を抑制することが示唆された。今後の発癌予防への応用が期待される。