ABSTRACT 952(P3-5)
1'-Acetoxychavicol acetateの活性酸素産生抑制作用:中村宜督1、村上明2、大音良美1、鳥飼康二1、大東肇1、田中卓二3 (1京大院農・応生科、2近畿大・生物理工、3金沢医大・第一病理)
Inhibitory effect of 1'-acetoxychavicol acetate on reactive oxygen species generation : Yoshimasa NAKAMURA1, Akira MURAKAMI2, Yoshimi OHTO1, Koji TORIKAI1, Hajime OHIGASHI1 and Takuji TANAKA3 (1Graduate Sch. of Agric., Kyoto Univ., 2Fac. Biological-Oriented Sci. and Tech., Kinki Univ., 3First Dep. Pathology, Kanazawa Medical Univ.)
[目的] 1'-Acetoxychavicol acetate (ACA) は、熱帯産ショウガ由来のphenylpropanoidで、様々な臓器において発がん抑制効果を示す。本研究では、ACAがマウス皮膚において白血球を介した酸化ストレスを軽減できるかを調べるために、炎症過程で変動するbiomarkerについて、ACAの前処理による抑制効果を検討した。
[方法及び結果] マウス皮膚において白血球による活性酸素の産生には、複数回のTPA塗布が必須であるという仮説に立脚し、マウス皮膚過酸化水素産生実験を確立した。その結果、2度のTPA (8.1 nmol) 塗布によってコントロールの約20倍の過酸化水素が生成した。ACA (810 nmol) を両TPA処理の30分前に塗布したところ、過剰な過酸化水素の産生をコントロールレベルにまで低下させた。このACAの過酸化水素産生抑制作用は、前半の白血球の集積段階の抑制ではなく、後半の活性酸素産生段階の特異的な抑制によるものであった。さらに、組織学的研究より、TPA塗布回数の増加に伴い、炎症の程度をあらわすbiomarker -白血球の浸潤、hyperplasia、細胞増殖 (抗PCNA陽性細胞核) -のindexがいずれも増大し、ACAの2回目のTPAに対する前処理はこれらを有意に低下させた。このことからACAは、白血球による活性酸素産生を抑制するという機構を介して、TPAの多重塗布による苛酷な酸化ストレスと炎症の憎悪を軽減していることが示唆された。