ABSTRACT 954(P3-5)
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ケルセチンによる酸化的DNA損傷:山下成人、川西正祐(三重大・医・衛生)

Oxidative DNA damage induced by Quercetin: Naruto YAMASHITA, Shosuke KAWANISHI(Dept. Hygiene, Mie Univ. Sch. Med)

[目的]フラボノイドは、がんに対する化学予防の点から注目されている。しかし、ケルセチンは発がん性を有することが報告されている。そこで、DNA損傷性を指標にしてケルセチンおよび類似の構造を持つケンフェロール、ルテオリンを用いて、発がん性との関連を比較検討した。[方法](1)p53がん抑制遺伝子の単離DNA断片を32Pでラベルし、3種のフラボノイドを種々の金属イオン存在下で37℃1時間反応させ、DNA損傷について検討した。(2)ケルセチンについては、Maxam-Gilbert法を応用して、DNA損傷の塩基特異性について解析した。(3)単離DNAを用いて8oxodG生成量を測定した。[結果](1)Cu(II)存在下で、ケルセチンは強くDNAを損傷した。ケンフェロール、ルテオリンはほとんどDNAを損傷しなかった。ケルセチンによるDNA損傷はカタラーゼとCu(I)キレート剤によって抑制された。(2)DNA損傷の塩基特異性については、チミン、シトシンがよく損傷され、p53がん抑制遺伝子のホットスポットにも損傷が見られた。(3)ケルセチンは著しく8oxodGを生成したが、ケンフェロール、ルテオリンでは少なかった。[考察] ケルセチンのDNA損傷機構は、Cu(II)存在下においてケルセチンの自動酸化の過程で生じた過酸化水素とCu(I)が関与して酸化的にDNAを損傷すると推定でき、フラボノイドの自動酸化性とDNA損傷性に相関が見られた。今回の実験では、発がん性を持つケルセチンは強くDNAを損傷し、発がん性の報告のないルテオリン、ケンフェロールでは損傷が弱く、発がん性と酸化的DNA損傷性の関連が示唆された。現在、培養細胞での酸化的DNA損傷とアポトーシスの関連を検討中である。なお、本研究は三重大、種村浩との共同研究である。