ABSTRACT 962(P3-5)
膵癌におけるCOX-2の発現とNSAIDsによる細胞増殖抑制 :近藤 仁1、後藤田卓志1、横田敏弘1、斎藤大三1、小菅智男2(国立がんセ・中央病・1内、2外)
Expression of COX-2 and growth inhibition by NSAIDs in pancreatic cancer: Hitoshi KONDO1, Takuji GOTODA1, Toshihiro YOKOTA1, Daizo SAITO1, Tomoo KOSUGE2 (1Dept. of GI Oncology, 2Surgical Oncology, NCCH)
「目的」COX-2(cyclo-oxygenase)はプロスタグランジン合成に関与する酵素で細胞増殖と密接に関係し、その阻害剤であるNSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)の服用により大腸癌の発生率が半減することから臨床的にも注目されている。我々は膵癌におけるCOX-2の発現を免疫組織学的に検討するとともに、NSAIDsが膵癌株の増殖に及ぼす影響について検討した。「方法」通常型膵がん42症例および膵管内乳頭腫29病変(がん9例、腺腫20例)のパラフィン切片をCOX-2に対するpolyclonal抗体(IBL社)で免疫組織染色し、その発現と臨床病理像を比較した。膵癌培養細胞株5種と胃癌株(MKN-74)におけるCOX-2の発現及びNSAIDsを添加培養時の細胞数の変化を検討した。「成績」COX-2の発現は通常型膵がんの60% 、膵管内乳頭腫では、がん:40%、腺腫:20%に認められた。COX-2発現群で腫瘍径が有意に小さかったが、その他の臨床病理学的との有意な関連は認められなかった。膵癌細胞5株中3株および胃癌株に強いCOX-2発現が認められた。AspirinによりCOX-2が強く発現していた膵癌細胞株で明らかな増殖抑制が認められたが、発現の乏しい細胞株においては影響は殆どなかった。「結論」膵癌においても大腸癌と同様にCOX-2が発現しており、NSAIDsよる化学予防の可能性が示唆された。