ABSTRACT 967(P3-5)
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ビタミンEによるタバコ肺発癌の抑制機構の解析: 矢野友啓1、矢野善久2、大谷周造2、福島昭治3、市川富夫41国立健栄研・応用食品、2大阪市立大・医・第二生化、3第一病理、4武庫川女子大・生活環境)

A preventive mechanism of vitamin E against tobacco-induced lung carcinogenesis: Tomohiro YANO1, Yoshihisa YANO2, Shuzo OTANI2, Shoji FUKUSHIMA3, Tomio ICHIKAWA4 (1Div.Appl.Food Res.,Natl. Health Nutr., 2Dept.Biochem., Osaka City Univ. Med.School, 3Dept.Pathol., Osaka City Univ. Med.School, 4School of Life Environ. Mukogawa Womens' College)

[目的] 最近の疫学調査等から、タバコ肺発癌に対して男性よりも女性の方が感受性が高く、その発生率も増加していることが明らかとなってきた。本研究では、マウス肺発癌系を用いて、ビタミンEの女性タバコ肺発癌に対する抑制効果とその機構を検討した。
[方法] A/J系雌マウス6週齢を用い、実験開始日に1回4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone(NNK)を150mg/kgの用量で腹腔内投与を行った。投与4時間後に肺のDNA付加体(O6-methylguanine)及びNNK代謝酵素系レベルを、投与1ヶ月後にオルニチン脱炭酸酵素酵素(ODC)レベル及び細胞増殖シグナル伝達系(ERK)の活性化を検討し、投与20週間後に肺に発生した腫瘍を形態学的に計測した。尚、ビタミンE添加食としてコントロール食の15倍のビタミンEを含んだ食餌を用いた。
[結果・考察] O6-methylguanineレベルはビタミンE摂取により有意に抑制された。このビタミンEのDNA付加体レベルの抑制にはNNKの代謝活性化の抑制よりもその解毒経路の活性化が寄与していることが推測された。また、 NNK投与により活性化されたODC誘導に関与するシグナル伝達系の1つであるERKシグナル伝達系は、ビタミンE摂取によりその活性化が抑制された。同様に、ODC誘導も抑制された。さらに、肺に発生した腫瘍数もビタミンE摂取により有意に低下した。以上、ビタミンEはタバコ肺発癌に対し、initiation段階においてはDNA損傷を抑制し、promotion段階では細胞増殖に関するシグナル伝達系を抑制することが推測された。