ABSTRACT 1011(P4-2)
2種の転写型をもつヒトLIMK2遺伝子の解析: 野本周嗣1, 立松義朗2, 高橋 隆1,2, 長田啓隆1,2 (1愛知がんセ・研・超微, 2同・病態)
Characterization of alternative transcripts of human LIMK2: Shuji NOMOTO1, Yoshio TATEMATSU2, Takashi TAKAHASHI1,2 & Hirotaka OSADA1,2 (Aichi Cancer Center Res. Inst., 1Lab.Ultrastruct.Res. & 2Pathophysiol.Unit)
【目的】LIMK2遺伝子はLIMドメインとキナーゼドメインを持つ遺伝子であり、N末の差異でLIMドメインを2個持つ2aと1.5個持つ2bの2種の転写産物が存在する。LIMK2aと2bの機能的差異・転写制御機構の解明を目指して、発現を定量的に検討すると共に、それぞれのプロモーター領域を単離して機能解析を行った。【方法】2a・2bの発現を種々の正常組織・癌細胞株でRNase Protection法にて検討した。Primer伸長法により転写開始点を確定し、λファージのヒトゲノムライブラリーより2a・2bのプロモーター領域を単離し塩基配列を決定した。さらにこの領域よりレポーターを作成し、2a優位なKATO-IIIと2b優位なNUGC2とでプロモーター活性制御領域を検討した。【結果】消化器系組織では2a優位で、腎・脳・副腎では2a・2bともに発現を認めた。肺では胎生期と成人で優位性の変化が見られた。多くの癌細胞株では正常組織と同様の優位性を示したが、一部の癌細胞株では著しく2b優位であった。レポーター解析では、2aはKATO-IIIで、2bはNUGC2で高いプロモーター活性が見られ、実際の発現と良い相関が見られた。2aプロモーターでは-453〜-266と-163〜-64の二カ所で促進的作用を認め、2bプロモーターでは-798〜-701と-235〜-53の二カ所で促進的、-447〜-345で抑制的作用を認めた。これらの領域ではMZF-1、GATAファミリー、RORα等の結合部位が見られた。又、2a・2b特異的Exonはゲノム構造上約50Kbの広い範囲に渡っていた。【考察】以上より(1)2a・2bの転写は組織特異性があり、組織の発生・分化への関与が示唆された。(2)一部の腫瘍で発現特異性の異常がみられ癌発症への関与が示唆された。(3)それぞれのプロモーター活性制御領域が同定され、種々の転写因子結合部位を認めた。これら発現特異性に関する解析は、2種の転写産物の機能的差異を含めLIMK2遺伝子の機能解明の一助となると考えられた。