ABSTRACT 1022(P4-3)
ヘビ毒由来アポトーシス誘導因子 Apoxin I の細胞死誘導活性の検討:馬島哲夫1,鳥居慎一1,山根和彦2,芳賀直実1, 内藤幹彦1,鶴尾隆1,2(1東大・分生研,2癌研・癌化療セ)
The Cell Death Inducing Activity of Apoxin I, a Novel Apoptosis-Inducing Factor Derived from Western Diamondback Rattlesnake Venom : Tetsuo MASHIMA1,Shinichi TORII1,Kazuhiko YAMANE2,Naomi HAGA1,Mikihiko NAITO1,Takashi TSURUO1,2 ( 1Inst. Mol. Cell. Biosciences., Univ.Tokyo, 2Cancer Chemother. Ctr., Jpn. Fdn. Cancer Res)
新たな癌化学療法および癌の遺伝子治療法の開発において、癌細胞に細胞死を誘導する因子の同定は重要な課題のひとつである。前回の本学会で我々は、癌細胞にアポトーシスを誘導する活性を指標に、ガラガラヘビ粗毒より55KDaタンパク質Apoxin Iを分離精製し、さらにこれをコードする遺伝子をクローニングしたことを報告した。Apoxin IはL-アミノ酸酸化酵素活性を有し、標的細胞内外のL-アミノ酸の酸化によって生じたH2O2を介してアポトーシスを誘導する。今回、我々はさらにそのリコンビナント蛋白を効率よく産生する系を確立し、得られたリコンビナントApoxin Iを用いてアポトーシス誘導能を検討した。まず全長 Apoxin I 遺伝子を動物細胞発現ベクターpCGBLに組み込み、ヒト293T細胞に一過性に発現させた。その結果、その培養上清中にApoxin I 蛋白が分泌されてくることが明らかになった。得られたリコンビナントApoxin I 蛋白はL-アミノ酸酸化酵素活性を有することが示された。興味深いことに、Apoxin I 遺伝子を一過性に発現された293T細胞は自身の分泌するApoxin I 蛋白によってオートクラインに細胞死が誘導されることが明らかになった。さらにリコンビナントApoxin I 蛋白を、化学療法剤に異なる感受性を示す種々のヒト卵巣癌細胞に処理したところ、化学療法剤抵抗性の卵巣癌細胞にも細胞死を誘導することがわかった。さらにApoxin I 蛋白の癌治療への応用の可能性について議論したい。