ABSTRACT 1033(P4-3)
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グルコース調節ストレスによるアポトーシス誘導に高感受性な変異株HA511におけるp21/waf1/cip1の誘導:鈴木裕之1、冨田章弘1、輿水律子1、鶴尾隆1、21東大・分生研、癌研・癌化療セ)

Induction of p21/waf1/cip1 in apoptosis-sensitive HT29 mutant, HA511, under glucose-regulated stress conditions: Hiroyuki SUZUKI1, Akihiro TOMIDA1, Ritsuko KOSHIMIZU1, Takashi TSURUO1,2 (1Inst. Mol. Cell. Biosci. Univ. Tokyo , 2Cancer Chemother. Ctr., Jpn. Fdn. Cancer Res. )

固形がん内部の特有の環境因子である栄養飢餓、低酸素状態などのストレスに対し、がん細胞は種々の生存機構を活性化させ、アポトーシスへの抵抗性を獲得すると考えられている。 我々は、ヒト大腸がんHT-29T9 細胞より、低酸素やグルコース飢餓を初めとするグルコース調節ストレスに高感受性で、アポトーシスの誘導される変異株HA511の樹立に成功した。HA511はストレスばかりでなく、抗Fas抗体や、抗がん剤シスプラチンにも高感受性であることが明らかになった。我々はこの感受性の差を規定する遺伝子を同定するため、サブトラクション法により両細胞株で発現量の異なる遺伝子を単離した。 その結果、変異株HA511にストレス特異的に誘導される遺伝子として、Cdk inhibitorであるp21/waf1/cip1を見い出した。p21はストレス誘導化合物Glucosamine処理8時間でピークに達し、その後細胞死の進行にともない徐々に減少していった。また、生理的なストレスであるグルコース飢餓に対しても細胞死に先立ってp21が誘導されることが明らかになった。さらにHA511のストレス環境下での細胞周期の変動を調べたところ、G1 arrestの後、アポトーシスが誘導されることが明らかになった。一方、親株HT29T9でもストレスによりG1 arrestは観察されるが、p21の誘導は見られなかった。従ってp21の誘導はHA511のG1 arrestのみならず細胞死にも関与することが示唆され、現在その可能性を検討中である。