ABSTRACT 1045(P4-3)
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放射線誘発細胞死におけるカスパーゼ活性化機構:山本富裕美1, 四ノ宮成祥2, 久野幸恵2, 3, 六反田亮21防衛医大・放医、2防衛医大・微生物、3ポーラ化成・医薬品研究所)

Caspase activation mechanism in radiation-induced cell death : Fuyumi YAMAMOTO1, Nariyoshi SHINOMIYA2, Yukie KUNO2, 3, Makoto Rokutanda2 (1Dept. of Radiol., Natl. Def. Med. Col., 2Dept. of Microbiol., Natl. Def. Med. Col., 3Pola R&D Laboratories)

【目的】放射線誘発細胞死には間期死および増殖死という2つの異なる概念がある。これらは細胞周期と密接に関わっており、照射線量依存性に異なる細胞周期分画がアポトーシスを起こす。今回我々は、異なる2つのアポトーシスのパターンを指標に、放射線誘発細胞死のメカニズムをカスパーゼの活性化機構の面から検討した。
【方法】U937細胞に対し高線量(20Gy)と低線量(5Gy)の放射線照射を行い、各々間期死および増殖死を誘発した。U937細胞よりも放射線抵抗性を示すEL-4細胞を比較検討の対象とした。細胞死の評価はsub G1 fractionの比率とnick end labelingによるDNA strand breakの有無により行った。カスパーゼの活性化については、アクチン切断およびPARP切断をSDS-PAGE, Western blotにて経時的に確認した。カスパーゼ阻害薬としてはDEVD (100μM)とYVAD (100μM)を用いた。
【結果】高線量照射では6時間以内にS期細胞にアポトーシスが誘導された。PARP切断に代表されるカスパーゼの活性化は4時間目で既に観察され、この時のアポトーシスは直ちにDNA strand breakを起こす間期死であった。細胞死はDEVDおよびYVAD処理により強く抑制された。一方、低線量照射では、G1期進行後にアポトーシスが誘導される増殖死のパターンを示した。早期のカスパーゼ活性化はみられず、24時間目以降の細胞死はカスパーゼ阻害剤により抑制されなかった。
【考察】間期死と増殖死を比較した場合、放射線照射後のアポトーシスに関わる細胞内カスパーゼ活性化経路が異なっていることが示唆された。現在、放射線誘発細胞死に関わる経路の詳細について検討している。