ABSTRACT 1049(P4-3)
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3H-チミジンの取り込みによって誘導される血球系細胞のアポトーシスには過酸化物が関与している:寺岡弘文、矢野倉美恵子、山本興太郎(東京医歯大・難治研)

Involvement of peroxides in [3H]thymidine-induced apoptosis of hemopoietic cells: Hirobumi TERAOKA, Mieko YANOKURA, Kohtaro YAMAMOTO (Med. Res. Inst., Tokyo Med. Dent. Univ.)

放射線の生体に対する影響の研究は、X線やγ線を細胞外から照射する場合がほとんどである。放射性物質、特に3Hや14Cなどの低エネルギーβ線放出核種が細胞内に取り込まれた際の影響に関しては、ほとんど解明されていない。我々は、3H-チミジンがHL-60、Molt-4、Jurkatなどの細胞核内に取り込まれたことによって典型的なアポトーシス(DNAラダー、カスパーゼ-3活性上昇、"死の基質"の切断など)が誘導されることを見つけ、その機構解明を目指している。今回は本研究の一環として、このアポトーシスへの過酸化物の関与を調べるために、過酸化水素耐性・カタラーゼ高発現のHL-60変異株(HP-50、HP-100)を適用した。HP-50(カタラーゼ活性が約十倍高い)ではHL-60と差が認められなかったが、HP-100(カタラーゼ活性が約百倍高い)では、一日後にHL-60で認められる3H-チミジンによるアポトーシスが抑制されていた。対照的に、紫外線照射によって誘導されるアポトーシスでは違いが認められなかった。3Hなどの低エネルギーβ線放出核種によって誘導されるアポトーシスにおいても、X線やγ線などの電離放射線と同様に活性酸素種などの過酸化物がトリガーになっている可能性が示唆された。X線高感受性の2重鎖切断修復変異細胞株を用いた検討も加えている。