ABSTRACT 1058(P4-3)
イヌ初期印環細胞癌におけるBrdU誘発apoptosisの解析:姚 暁虹1,杉原洋行2,高松哲郎1,服部隆則2(1京都府立医大・病理,2滋賀医大・病理)
BrdU-induced apoptosis in minute signet ring cell carcinoma of canine stomach: Xiao-Hong YAO1, Hiroyuki SUGIHARA2, Tetsuro TAKAMATSU1, Takanori HATTORI2 (Depts. Pathol., 1Kyoto Pref. Univ. Med. 2Shiga Univ. Med. Sci.)
〔目的〕BrdUの投与によって、イヌの幽門腺の増殖帯に高率にapoptosisが誘発されることをこれまで報告してきた。このBrdUによるapoptosis誘発系を用いて、ENNGによって生じた初期印環細胞癌の細胞増殖において、apoptotic cell deathがどのように調節されているのかを解析した。〔材料と方法〕ENNGを8ヶ月間投与後、5〜10ヶ月間休薬したビーグル犬に対し、BrdUのflash標識または8時間間隔で25時間、49時間と73時間の間欠標識を行った。初期印環細胞癌の認められたものから、flash標識または間欠標識を行ったものを各時点につき3病変ずつ選んだ。胃の病変部の連続切片で、PCNAとBrdUの免疫染色とTUNEL法によるapoptosisの染色を行い、正常腺管と初期印環細胞癌の増殖帯(PCNA陽性ゾーン)におけるapoptosisの頻度をカウントした。〔結果〕flash標識された正常幽門腺/腫瘍では増殖帯の細胞の1.7%/2.8%でapoptosisがみられ、25時間および49時間の間欠標識では、それぞれ2.3%/4.9%および4.6%/11.0%と増加し、73時間では3.6%/7.0%と減少した。表層のPCNA陰性ゾーンでは、正常幽門腺でも腫瘍でも、49時間以降、増殖活性が低下するとともにapoptosisの頻度が低下した。〔考察〕初期印環細胞癌では、BrdU取り込みによるDNA mispairを検知してapoptosisを誘発したり、増殖活性の変化に応じて表層のapoptosisを調節する正常胃腺の機能が保たれている可能性がある。またBrdUによって正常より高率にapoptosisが生じたことから、初期癌であっても、既にDNAにdamageが加わっていると推定された。