ABSTRACT 1059(P4-3)
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5-Fluoro -2'-deoxyuridine が FM3A 細胞に誘導する細胞死 : necrosis と apoptosis:江原陽子、角谷俊文、横川達史、神社佳栄、日高宗明、綿矢有佑(岡山大・薬)

5-fluoro-2'-deoxyuridine induced cell death in FM3A cells : necrosis and apoptosis :Yoko EBARA, Toshifumi KAKUTANI, Tatsushi YOKOGAWA, Kae KANJA, Muneaki HIDAKA, Yusuke WATAYA (Faculty of Pharm. Sci., Okayama Univ.)

【目的】マウス乳癌由来 FM3A 細胞(野生株 F28-7 株)に5-fluoro -2'-deoxyuridine (FUdR) を作用させると、細胞内デオキシリボヌクレオシド三リン酸プール に不均衡を生じ、細胞内 DNA 切断を伴い細胞は死に至る。今回、我々はFUdR によってnecrosis 様の細胞死を引き起こす F28-7 株とは異なる apoptosis 様の細胞死を誘導する F28-7-A 株を得、各細胞株で誘導される細胞死の違いについて検討を行った。
【方法】FUdR 作用後の細胞の形態学的変化を共焦点レーザー蛍光顕微鏡を用いて観察した。細胞内 DNA の切断化を電気泳動によって検出した。転写因子をコードする c-jun, c-fos mRNA レベルの変化をノーザンブロット法を用い調べた。
【結果・考察】FUdR を F28-7 株に作用させると、形態学的に細胞が膨張する necrosis 様の細胞死が生じ、F28-7-A 株では apoptosis 小体の形成を伴う apoptosis 様の細胞死が誘導された。細胞内 DNA の切断については、 F28-7 株では FUdR によって 100-200 kbp の長い断片が生じた。一方、F28-7-A 株では、F28-7 株で認められないヌクレオソ−ム単位の整数倍のラダー状の断片化が生じていた。また、F28-7 株では、c-jun, c-fos mRNA レベルが F28-7-A 株に比べ著しく増加していた。さらに、caspase-3-like protease 活性についても同様に、F28-7 株の方が高い活性を示した。以上のように、細胞死誘導シグナルが著しく増加する条件下では、細胞は necrosis へ、逆にシグナルの誘導の程度が低い場合には apoptosis へと導かれることが示唆された。この二つの細胞株を比較検討することによって、 necrosis と apoptosis それぞれの分子機構を解明する手掛かりを得られると我々は考えている。