ABSTRACT 1061(P4-3)
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グリオーマに対するアポトーシス誘導における膜型 FasL と可溶型 FasL との比較:一ノ瀬 誠, 白石哲也1, 増岡 淳, 峯田寿裕, 田渕和雄(佐賀医大 ・脳外, 共愛会共立病院・脳外1

Apoptosis of human glioma cells induced by recombinant Fas ligand - comparison between membrane-bound and soluble Fas ligand -:Makoto ICHINOSE, Tetsuya SHIRAISHI1, Jun MASUOKA, Toshihiro MINETA, Kazuo TBUCHI (Dpt. of Neurosurgery, Saga Med. Sch., Kyouaikai Kyouritsu Hosp1.)

(目的) アポトーシス誘導機構の一つである Fas/Fas ligand (FasL) 系では、可溶型 FasL (sFasL) の細胞障害活性は膜型 FasL (mFasL) のそれに比較すると非常に弱く、しかも mFasL の細胞障害活性を阻害するとも言われている。今回、我々はグリオーマに対するアポトーシス誘導能の立場から mFasL と sFasL とを比較検討した。(方法) ヒト培養グリオーマ細胞 T98G に対し、バキュロウイルスによる蛋白発現系にて作製した mFasL (0.25-1.0 ng/ml) および pichia 酵母にて作製した sFasL (1, 10, 100 μg/ml) を作用させ、72 時間後の細胞障害活性を比較検討した。また細胞を IFN-γ(200 U/ml) にて前処置した場合とも比較した。 IFN-γによるFasの発現の変化はFas ELISA kit を用いて測定した。(結果) mFasL は濃度依存性に殺細胞効果を示し、1 ng/ml では生細胞数は10 % 以下となった。一方、sFasL は100 μg/ml の高濃度でも若干の増殖抑制効果を示すに過ぎなかった。しかし、細胞を IFN-γで前処置すると Fas の発現は約2倍となり、sFasL の殺細胞効果は平均 4.6 倍増強された。(結論) mFasL は sFasL と比較して、培養グリオーマ細胞に対して強い殺細胞効果を示した。mFasL は FLICE/caspase-8 系を介してアポトーシスを誘導するが、sFasL の作用は mFasLと別の情報伝達系路をとることが推察されている。今後、より効果的なアポトーシス誘導療法の開発に向けて、Fas の発現誘導や Fas の情報伝達系の検討を追加する予定である。