ABSTRACT 1067(P4-3)
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タモキシフェンによるラット肝癌細胞のアポト−シス誘導機構:中村真也,杉山晶規,田代文夫(東京理科大・基礎工)

Molecular mechanism of tamoxifen-induced apoptosis in rat hepatoma cells : Shinya NAKAMURA, Akinori SUGIYAMA, Fumio TASHIRO (Dept. Biol.Sci. Technol., Science Univ. Tokyo)

我々は、抗エストロゲン剤であるタモキシフェン(TAM)がc-myc遺伝子を過剰発現しているエストロゲン非依存性ラット肝癌K-2細胞にアポト−シスを誘導すること、および本アポト−シスはc-mycアンチセンスオリゴヌクレオチドやデキサメタゾン(DEX)によって、顕著に抑制されることを明らかにしてきた。今回、本アポト−シスの分子機構をさらに詳細に検討するために、K-2細胞のcaspaseおよびDNaseに対するTAMおよびDEXの作用を解析した。TAMにより誘導されるK-2細胞のアポト−シスはcaspaseの阻害剤であるYVADおよびDEVDにより抑制された。そこで、TAM処理K-2細胞でのcaspase活性を蛍光基質を用いて測定したところ、caspase-3が顕著に活性化されていた。しかし、caspase-1に関しては、有意な変化は認められなかった。このcaspase-3の活性化に伴って、poly(ADP-ribose) polymerase (PARP)の分解が検出されたが、核マトリックスタンパク質であるラミンの分解は認められなかった。さらに、activity gel法によりDNase活性を調べたところ、Mg2+、Ca2+依存性の17kDaのDNase活性が約4倍上昇していた。次に、TAMによって誘導されるK-2細胞のアポト−シスはDEXにより強く抑制されることから、bcl-2ファミリ−遺伝子発現に対するDEXの作用を調べた。その結果、DEXはbcl-xL遺伝子発現を選択的に促進することが判明した。また、bcl-xLの発現上昇に伴って、caspase-3の活性は抑制された。これらの結果より、TAMはcaspase-3によるPARPの分解を介して、17kDa DNaseを活性化しアポト−シスを誘導することが強く示唆された。一方、DEXは、bcl-xL遺伝子発現を誘導することによりcaspase-3の活性化を阻害し、TAMによるアポト−シスを抑制しているものと思われる。