ABSTRACT 1068(P4-3)
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ベンジリデンアスコルベ−トによって神経芽細胞腫IMR-32細胞に誘導されるアポト−シスの解析:坂本かおり1,加藤直子1,杉山晶規1,田代文夫1,東風睦之21東京理科大・基礎工,2一条会病院)

Analysis of benzylideneascorbate-induced apoptosis in neuroblastoma IMR-32 cells:Kaori SAKAMOTO1,Naoko KATOU1,Akinori SUGIYAMA1,Fumio TASHIRO1 and Mutuyuki KOCHI2 (1Dept.Biol.Sci.Technol.,Science Univ. Tokyo, 2Ichijyoukai Hosp.)

我々は、今までにsodium 5,6-benzylidene-L-ascorbate(SBA)でヒト神経芽腫IMR-32細胞を処理すると細胞死が誘導されると同時に、SBAに耐性となった生存細胞の一部は細胞塊を形成して長い神経突起を有するコリン作動性神経細胞に分化していること、およびSBAによるIMR-32細胞の死は神経栄養因子(NGF)で選択的に抑制されることを明らかにしてきた。また、SBAにより細胞死を誘導した際bcl-2、bcl-xLの遺伝子発現に有意な差は認められないが、bax遺伝子の発現が上昇することも報告してきた。また、これとほぼ平行して細胞の増殖・分化・生存維持の制御に関連しているRb蛋白質のポケットAとBの間で切断が生じていること、cell-free系での実験によりRbの切断はcaspase-3の阻害剤であるDEVDにより抑制されることなども明らかとしてきた。そこで本研究では、Rbの切断による失活がアポト−シスを誘導するという考えに基づき、Rbにより活性が負に調節される転写因子E2Fの標的遺伝子として知られ、IMR-32細胞で過剰に発現されているN-myc遺伝子とSBAによる細胞死の関係を調べた。その結果、SBA処理によりN-myc遺伝子の発現がRNAおよび蛋白質レベルの両方で上昇が認められた。さらにN-mycのアンチセンスオリゴヌクレオチドの添加によりSBAによる細胞死が顕著に抑制されることがわかった。またactivity gel法により、IMR-32細胞にはCa2+/Mg2+依存性の66kDaのエンドヌクレア−ゼが存在することが明らかとなったが、SBA添加による有意な活性変動は検出されなかった。以上の結果からSBAによるIMR-32細胞のアポト−シス誘導にはbaxの発現誘導、 caspase-3の活性化およびRb蛋白質のポケット領域での切断、それに伴って引き起こされるN-myc遺伝子のさらなる発現亢進が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。