ABSTRACT 1070(P4-3)
IFN-αのヒト肝癌細胞株の増殖に及ぼす影響:矢野博久、家村昭日朗、服巻誠、小笠原幸子、久下亨、山口倫、高山朗子、神代正道(久留米大・医・病理)
Effects of interferon-a on the growth of human liver cancer celllines: Hirohisa YANO, Akihiro IEMURA, Makoto HARAMAKI, Sachiko OGASAWARA, Tohru HISAKA, Rin YAMAGUCHI, Akiko TAKAYAMA, Masamichi KOJIRO (Dept. of Pathol., Kurume Univ. Sch. of Med.)
【目的】慢性ウイルス性肝炎の治療薬であるIFN-αの肝癌細胞の増殖に対する作用について検討した。【材料及び方法】実験には、天然型IFN-α(OIF、大塚製薬株式会社より供与)と当教室で樹立・維持している肝癌細胞株13株を用いた。(1)細胞株のIFN-α receptor及びIFN-α/β receptorのmRNAの発現をRT-PCR法で検討した。(2)細胞をIFN-α(1 - 1024 U/ml)添加培地で24〜96時間培養し、生細胞数をMTT assayで測定した。(3)IFN-α 添加培地で72時間培養後、細胞形態の観察と伴に、細胞よりDNAを抽出しagarose gel電気泳動を行った。(4)IFN-αの細胞周期への作用をBrdU/PIで2重染色後、flow cytometryで解析した。【結果】(1)IFN-α receptor及びIFN-α/β receptorのmRNAの発現をすべての細胞株で認めた。(2)IFN-αは、種々の程度に濃度及び時間依存性に細胞の増殖を抑制した。1024 U/mlのIFN-αを添加培養した際、13株中5株で、96時間目の細胞数がコントロール(IFN-α無添加)の50%以下に減少した。(3)13株中8株で位相差顕微鏡下で、apoptoticな細胞の出現を認め、電気泳動では6種類の細胞株にアポトーシスに特徴的なDNAのladderの形成を認めた。(4)細胞周期の解析では、G1期あるいはG2/M期への集積傾向を各1株に認めた。【結論】IFN-αは、肝癌細胞株に対してアポトーシス、G1期停止、G2/M期停止などを誘導し細胞増殖を抑制した。前癌病変や極く初期の肝細胞癌に対して直接的に増殖抑制的に作用し、肝細胞癌の発癌・進展を予防している可能性が推察された。