ABSTRACT 1071(P4-3)
Double-stranded RNAをトリガーとしインターフェロンによって肝癌細胞株に誘導されるアポトーシスについての検討 :金澤禎行, 林 紀夫, 上田啓次, 石田 永, 飯尾禎元, 大川和良, 三田英治, 佐々木裕, 笠原彰紀, 堀 正二 (阪大・医・第1内科)
Activation of interferon system triggered by double-stranded RNA induced apoptosis in hepatocellular carcinoma cell lines : Yoshiyuki KANAZAWA, Norio HAYASHI, Keiji UEDA, Hisashi ISHIDA, Sadaharu IIO, Kazuyoshi OHOKAWA, Eiji MITA, Yutaka SASAKI, Akinori KASAHARA, Masatsugu HORI ( First Dept. of Med., Osaka Univ. Sch. of Med.)
(目的)ウイルス複製中間体の疑似物質である合成2本鎖RNA (dsRNA) は,線維芽細胞などに対する強いインターフェロン(IFN)beta誘導能を有していることが知られている.我々は,dsRNAをtransfectionによって細胞内に導入することで,ヒト肝癌細胞株にアポトーシスを惹起しうるという事を見出したので報告する.(方法)合成dsRNAをカチオニックリポソーム法でヒト肝癌細胞株 HepG2, Hep3B, Huh-7に導入した.コントロールとして合成1本鎖RNA (ssRNA)を用いた.アポトーシスは,形態的には位相差顕微鏡,Hoechst 33342による核染色によって評価し,トリパンブルー染色,fragmented DNAの定量ELISAなどによって定量評価を行った.(成績)dsRNAをtransfectすることにより,HepG2, Hep3B, Huh-7のいずれにも細胞死が誘導され,形態評価によってアポトーシスである事を確認した.経時的には例えばHep3Bでは,transfection後,約8時間でcell shrinkage等の変化が観察され始め,36時間後には約70%の細胞にアポトーシスが誘導された.一方,ssRNAではアポトーシスは誘導されなかった.dsRNAの導入によって,IFNbetaとその下流のシグナルであるPKRの誘導がNorthern法によって確認されたが,ssRNAの導入ではこれらの誘導を認めなかった.また,抗IFNb抗体を添加する事によって,あるいは,PKRの阻害剤,2-aminopurineを添加することでアポトーシスは一部抑制された.逆に,IFNbetaを添加する事により,いずれの細胞においてもアポトーシスの増強が認められた.(結論)dsRNAは,ヒト肝癌細胞株 にアポトーシスを誘導する事が明らかとなった.さらに我々は正常肝細胞由来の株においても同様の現象が起こることを確認しており,一般に細胞は,dsRNAによってウイルスの存在を認識し,IFNシステムを活性化することで自らアポトーシスを誘導しウイルスを排除しようとしているものと解釈でき,IFNシステムの新しい作用を示唆するものと考えられる.