ABSTRACT 1074(P4-3)
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GDNF、NTN-RETシグナルを介した神経芽腫の細胞死抑制機構の解析:高田尚幸、磯貝恵理子、菱木知郎、河本竹正、中川原 章(千葉がんセ・研・生化)

Molecular analysis of inhibitiory mechanism of the neuroblastoma cell death by GDNF, NTN-RET signaling: Naoyuki TAKADA, Eriko ISOGAI, Tomoro HISHIKI, Takemasa KAWAMOTO, Akira NAKAGAWARA (Div. Biochem., Chiba Cancer Center Res. Inst. )

神経芽腫の多くは神経栄養因子glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)およびneurturin (NTN)で分化が誘導される。今回我々はGDNFおよびNTNが神経芽腫の細胞死をも抑制しうることを見い出し、その細胞内シグナル伝達機構について分析検討した。
[方法および結果]神経芽腫細胞株CHP134は、mutation がないwild type のp53が細胞質に蓄積されている神経芽腫細胞株である。この細胞はレチノイン酸(RA 1μM)により細胞死が誘導され、9日目には生存細胞はなくなった。しかしRAと同時にGDNFまたはNTN(100ng/ml)で処理すると細胞死は抑制され、9日目でも処理直前とほぼ同数の生細胞数が計測された。シグナル伝達系の解析の結果、無処理CHP134ではGDNF、NTN受容体構成要素であるRETチロシンキナーゼが発現していなかったが、RA処理によりRETの発現が誘導され、さらにGDNFおよびNTNの存在下でRET自身とその下流シグナル伝達物質であるShc、MAPK、PLC-γ1、PI3-Kなどがリン酸化されていることが判明した。
[考察]GDNF、NTNはRET 発現が誘導されたCHP134でリガンド特異的に細胞死を抑制した。現在GDNF、NTN-RETシグナルがどのように細胞の生存に寄与するか、細胞質に局在するp53の動態やcaspase活性の変化などの点からさらに解析中である。