ABSTRACT 1109(P4-5)
 ポスターセッション一覧 トップ 


肺癌におけるp73遺伝子の変異とアリル特異的発現に関する検討: 春木伸裕1,3,野本周嗣1,近藤征史1,小西裕之1,高橋孝夫1,藤井義敬3,高橋利忠2,高橋隆1 (愛知がんセ・超微, 2同・免疫、3名市大・医・二外)

Search for mutations and examination of allele-specific expression of p73 in lung cancer: Nobuhiro.HARUKI1,3, Shuji NOMOTO1, Masashi KONDO1, Hiroyuki KONISHI1, Takao TAKAHASHI1, Yoshitaka FUJII3,Toshitada TAKAHASHI2, Takashi TAKAHASHI1 (1Lab. Ultrastructure Res., 2Lab. Immuno., Aichi Cancer Cntr. Res.Inst., Nagoya 464; 32nd Dept. Surg., Med. Sch., Nagoya City Univ.)

【目的】p73遺伝子は、代表的ながん抑制遺伝子であるp53に構造及び機能的に相同性を持ち、神経芽細胞腫や乳癌等において高頻度にdeletionのみられる1p36.33に位置する。また、p73はゲノム刷り込みによる発現調節を受けている事が示唆されている。肺癌発症への関与の可能性を検討するために、p73遺伝子の変異とアリル特異的発現に関する解析を行った。【対象・方法】肺癌61例(小細胞癌4、腺癌26、扁平上皮癌28、大細胞癌3)を対象に、RT-PCR-SSCP法による遺伝子異常の検索を行った。また、RT-PCR-SSCP法によって検出可能なexon2の遺伝子多形性を利用して、アリル特異的発現に関する解析と、PCR-SSCP法によるp73 locusにおけるLOH の検出を進めた。【結果】p73遺伝子のコドン336, 349, 557, 610にアミノ酸置換を伴わない遺伝子多形性を検出したが、体細胞変異は認めなかった。exon2の遺伝子多形性に関してinformativeな26例中25例が正常肺においてbiallelic expressionを示した。正常肺においてmonoallelic expressionを示した1例の肝や胃等の一部の臓器においても同様にmonoallelic expressionが検出された。p73 locusにおけるLOHは、26例中11例(42.3%)と高頻度であった。【考察】高頻度の1p36.33欠失存在は同領域にがん抑制遺伝子が存在する事を示唆するが、p73遺伝子に変異は検出されず、またp57KIP2にみられるexpressed alleleに偏奇したLOHも検出されなかった。したがって、p73は肺癌の発症に直接関与する主要な標的がん抑制遺伝子では無い考えられる。ゲノム刷り込みが示唆されているp73遺伝子の発現に、 interindividual-及びintertissue-specificなvariationがみられることは、ゲノム刷り込みの修飾機序の関与が示唆され興味深い。