ABSTRACT 1115(P4-5)
同一患者由来正常口腔粘膜上皮細胞と口腔扁平上皮癌細胞の発現遺伝子の比較:鎌田伸之、横山和博、林 英司、里村一人、上田直弘、長山 勝(徳島大・歯・1口外)
Comparative studies of gene expression in normal oral keratinocytes and oral squamous cell carcinoma cells derived from the same patient:Nobuyuki KAMATA,Kazuhiro YOKOYAMA, Eiji HAYASHI,Kazuhito SATOMURA,Naohiro UEDA, Masaru NAGAYAMA(1st Dept.of Oral Maxillofac Surg.,Sch.of Dent.,Tokushima Univ.)
癌の生物学的な特性の解析のためには、その癌の発生由来となった正常対照細胞との比較検討が必要である。我々は、口腔扁平上皮癌細胞あるいは、正常口腔粘膜上皮細胞の長期継代培養を支持する完全合成無蛋白培養系を確立した。これによって培地に添加した、血清、脳下垂体抽出液、および各種サイトカイン等の影響を受けずに、ヒト正常口腔粘膜上皮細胞と口腔扁平上皮癌細胞の生物学的性状の詳細な比較検討が可能になった。今回我々は完全合成無蛋白培地中で継代培養している、口腔扁平上皮癌細胞株HOC519細胞と、同一患者から分離培養した正常口腔粘膜上皮細胞の、対数増殖期におけるmRNAからcDNAを調整し、癌細胞で発現の上昇あるいは抑制の見られる遺伝子をサブトラクションライブラリー法を用いてクローニングした。
これらのうち、正常細胞に特異的に発現している遺伝子群のうちで最も高頻度に検出された遺伝子は全長430bpのcDNAで、putativeなpolyadenylation signal を有しており、塩基配列とORFから予想された99個のアミノ酸配列は、S100蛋白との相同性を持っていた。他の同一患者由来正常ー癌細胞のペアおよび数種の正常および口腔癌細胞における発現についても検討している。