ABSTRACT 1116(P4-5)
 ポスターセッション一覧 トップ 


ヒト胆道癌の発生に関わる遺伝子の同定:柏木浩暢1、平井みさ子1、吉田貞夫1,2、石川智義1、轟健2、深尾立2、三輪正直1、内田和彦11筑波大・基礎・生化、2筑波大・臨床・外)

Identification of genetic alterations in carcinogenesis of biliary tract cancers.: Hironobu KASHIWAGI1, Misako HIRAI1, Sadao YOSHIDA1,2, Tomoyoshi ISHIKAWA1, Takeshi TODOROKI2, Katashi FUKAO2, Masanao MIWA1 and Kazuhiko UCHIDA1 (1Inst. of Basic Med. Sci., 2Inst. of Clinical Med., Univ. Tsukuba)

【目的】きわめて予後不良とされる胆道癌の生物学的特性を明らかにするため、我々は胆道癌におけるp16CDKN2遺伝子の不活化とCGH による全ゲノムワイドでの遺伝子異常の同定から染色体17q, 5p, 12pの増幅、9p, 1pの欠失をすでに報告した。今回はCGHにおいて高頻度であった17qの増幅領域と9pの欠失領域について解析した。【方法】(1)染色体17qにおけるERB-B2遺伝子の増幅の検討:胆嚢癌で17qのgainがあった12例のパラフィンブロックより核標本を作成し17番染色体セントロメア特異的プローブとc-ERB-B2 プローブを用い2 color FISH解析を行った。(2)9p におけるp15 MTS2, p16 CDKN2, p19 ARF遺伝子変異の検討:胆道癌切除標本23例及び細胞株6株より抽出したDNAを用い染色体9p に存在するp15MTS2, p16 CDKN2, p19 ARF遺伝子の欠失をPCR法で、点突然変異をダイレクトシークエンス法で検出した。【結果】(1)17q gain 12例中5例でERB-B2遺伝子の増幅が認められた。(2) p15 MTS2の欠失は6株と3例で、p16 CDKN2の欠失は5株と6例で、p19ARFの欠失は5株と1例で認められた。 切除例におけるp16 CDKN2の点突然変異は6例、 p19 ARFの点突然変異は1例のみであった。p15 MTS2の点突然変異は認めなかった。 17qの増幅にはERB-B2遺伝子の増幅が深く関わっている可能性が示唆されたが、それ以外にも未知の癌関連遺伝子が存在する可能性があり、現在コスミドクローンのマイクロアレイを作成し、この領域に存在する癌遺伝子の同定を進めている。一方、9p領域についてはp16 CDKN2遺伝子と比較してp19 ARF遺伝子の変異は低頻度であり癌化への関与が少ないことが示唆された。