ABSTRACT 1121(P4-5)
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14-3-3βアンチセンスRNA発現による肝癌細胞の増殖抑制:杉山晶規1,宮城洋平2,加藤直子1,坂本かおり1,中村真也1,田代文夫11東京理科大・基礎工,2横浜市大・医・病理第2)

Growth suppression of hepatoma cells by expression of 14-3-3β antisense RNA:Akinori SUGIYAMA1,Yohei MIYAGI2, Naoko KATO1,Kaori SAKAMOTO1, Shinya NAKAMURA1, Fumio TASHIRO1 (1Dept. Biol. Sci. Technol., Science Univ. Tokyo, 2Dept. Pathology, Yokohama City Univ. School of Med.)

我々は、アフラトキシンB1誘導ラット肝癌細胞株(K-2)において癌遺伝子であるc-mycやRaf-1の活性化因子である14-3-3β遺伝子の発現亢進が見られることを報告してきた。また14-3-3βのmRNAに対するアンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドやAS-RNA発現ベクタ−の一過性の細胞内導入により、K-2細胞の増殖率の低下が見られることも明らかにしてきた。そこで今回は、14-3-3βAS-RNAを安定に発現するK-2細胞株を樹立し、ソフトアガ−上やヌ−ドマウス皮下における増殖能に対する14-3-3βの関与について検討を行った。その結果、コントロ−ル細胞に比べてAS-RNA発現細胞株は、ソフトアガ−上での増殖で約70%の低下が見られ、また、ヌ−ドマウス皮下移植により形成される腫瘍は約30%の大きさで抑えられることが明らかとなった。さらに組織学的解析から、AS-RNA発現細胞株により形成された腫瘍ではコントロ−ルに比べて、細胞分裂像が少なくなっていることもわかり、AS-14-3-3 RNAによりK-2細胞の腫瘍形成能も抑制されることが明らかとなった。以上の結果は、14-3-3βがK-2細胞の癌化において重要な役割を果たしていることを強く示唆している。最近では14-3-3が細胞周期調節因子やアポト−シス制御因子の活性調節に関与していることが報告されているが、現在、これらを含めた14-3-3βから始まる癌化のシグナル伝達様式についても検討中である。