ABSTRACT 1130(P4-6)
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癌遺伝子産物Pim-1キナーゼによるMyc依存性アポト−シス増強に関わる分子機序:望月 俊宏、北中 千史、野口耕司、 口野 嘉幸(国立がんセ・研・生物物理)

Identification of the target molecules for Pim-1 kinase involved in Pim-1-mediated enhancement of c-Myc-dependent apoptosis: Toshihiro MOCHIZUKI,Chifumi KITANAKA,Kohji NOGUCHI, and Yoshiyuki KUCHINO (Biophys. Div., Natl. Cancer CenterRes.Inst.)

pim-1 遺伝子はモロニーマウス白血病ウイルス感染によってもたらされる T 細胞リンパ腫においてプロウイルス DNA の挿入 によって活性化される癌遺伝子として同定されたもので、セリン/スレオニンキナーゼ活性をもつ蛋白質をコードしている。Pim-1 はアポトーシス抑制因子として知られている Bcl-2 と同様に c-Myc と協調してリンパ腫を引き起こすことから、 Pim-1 もアポトーシス抑制因子として機能することで細胞のトランスフォーメーションに関与しているのではないかと考えられてきた。しかしながら我々は、Bcl-2がc-Myc依存性アポト−シスを抑制するのとは対照的にPim-1がc-Myc 依存性アポトーシスをむしろ促進していることを明らかにし、これがc-Mycによるcaspase-3様プロテアーゼ活性化をPim-1が促進することにもとづくものであることを示した。今回、Pim-1 のもつセリン/スレオニンキナーゼ活性の発現に必須であるATP 結合サイトの Lys を Met に置換したkinase-defective Pim-1 mutant (Pim-1K67M)を用いた実験から、Pim-1がそのキナーゼ活性を介してc-Myc 依存性アポトーシスの誘導を増強していることを見い出した。これら一連の結果はPim-1キナーゼがc-Mycに始まる細胞内シグナル伝達経路に関わる分子をリン酸化を介して活性化することによりc-Mycのもつ生物学的機能を増強している可能性を示唆している。そこで今回さらにGST融合Pim-1蛋白質を用いてPim-1の標的分子の同定を試みた。その結果、約65kDaの分子量を示すもの(p65)を含めてPim-1に特異的に結合するいくつかの細胞性因子が存在することが明らかになった。現在これらPim-1結合因子の同定を行うとともに、細胞のアポト−シス誘導やトランスフォーメーションにおけるこれらの因子の役割と存在意義について解析を進めている。