ABSTRACT 1132(P4-6)
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LacSwitch による Bax 発現誘導細胞系の樹立と Bax 発現による抗癌剤誘発アポトーシスの増加:八木孝司、陸 王炎 君、武部啓(京大・医・放射線遺伝、現 近畿大・原研)

Establishment of cell lines expressing Bax by LacSwitch, and enhancement of anti-cancer agent-induced apoptosis by the Bax: Takashi YAGI, Yanjun Lu, and Hiraku TAKEBE1 (Grad. Sch. of Med., Kyoto Univ. and 1Kinki Univ.)

[目的]Bax は p53 によって誘導発現される蛋白の1つでアポトーシスに関与すると考えられている。これまでに我々は p53 によって誘導発現される p21 がX線やアドリアマイシンによるアポトーシスを抑制することを示し、その機構を研究してきた(Oncogene, 16, 705, 1998 および陸ら本学会発表)。我々は細胞が損傷を受けた後、p53 の発現量に依存して、細胞が p21 によってG1アレストを起こしたり、Bax によってアポトーシスを起こしたりすると考えている。今回、我々は LacSwitch (IPTG) によって Baxαが誘導発現できる細胞 (DLD-1, SAOS-2) 系を樹立し、抗癌剤によるアポトーシスに対する Baxαの発現の影響を調べた。
[結果と考察]樹立した2種の細胞に IPTG を処理すると、いずれの細胞でも時間に依存してBax の mRNA・蛋白ともに増加し、24 時間後には無処理の場合の約 5〜 10 倍になった。Bax の発現によって細胞死は起こらず、細胞の増殖速度も変わらなかった。Bax の発現によって細胞のアドリアマイシン、ダウノルビシンに対する感受性は増大したが、シスプラチン、ブレオマイシン、エトポシドに対する感受性は変化なかった。X線、紫外線、エチルメタンスルホン酸などの感受性にも変化なかった。アドリアマイシンによる細胞核の断片化(アポトーシス)は Bax 発現によって増加した。これらの結果は Bax がアドリアマイシン、ダウノルビシンによる細胞のアポトーシス誘発機構に働いていること、Bax は全ての物質による細胞死の機構に関わるわけではないことを示す。