ABSTRACT 1135(P4-6)
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血管新生因子Thymidine phosphorylaseによる低酸素下のアポトーシスの抑制:竹林勇二2、北薗正樹1、2、石塚賢治3、谷綾子1、古川龍彦1、高尾尊身2、福島正和4、山田雄次4、愛甲 孝2、秋山伸一1 (鹿児島大・医・1腫瘍研、2第一外科、3第二内科、4大鵬薬品工業)

Prevention of hypoxia-induced apoptosis by the angiogenic factor thymidin phosphorylase : Yuji TAKEBAYASHI2, Masaki KITAZONO1、2, Kenji Ishitsuka3, Ayako TANI1, Tatsuhiko FURUKAWA1, Sonshin TAKAO2, Masakazu FUKUSHIMA4, Yuji YAMADA4, Takashi AIKOU2, Shin-ichi AKIYAMA1 (1Cancer Res. Inst., 2First dept. of Surgery, 3Second dept. of Int. Med., Facult. Med., Kagoshima Univ., 498.6.26Taiho Pharmaceutical Co., LTD)

血管新生因子である血小板由来血管内皮細胞増殖因子/Thymidine phosphorylase(PD-ECGF/TP)は正常組織に比し、固形腫瘍において高レベルに発現している。また、PD-ECGF/TPの発現している大腸及び腎癌患者では発現していない患者に比べ、予後が悪いことが知られている。PD-ECGF/TPの発現は微小血管の密度に無関係に予後因子となっており、このことはTPがその血管新生活性に非依存的に腫瘍の進展に関係していることを示唆している。今回の実験では、低酸素下のアポトーシスに対し、TPがどの様な効果を示すかを観察した。TP非発現KB-3-1細胞にPD-ECGF/TPcDNAをトランスフェクトしたTP発現細胞は低酸素下で誘導されるアポトーシスに対し耐性となっていた。また、TPによるthymidineの代謝産物であるthymineと2-deoxy-D-riboseをKB-3-1細胞に投与すると低酸素下でのアポトーシスに耐性となることがわかった。さらに、2-deoxy-D-riboseの光学異性体である2-deoxy-L-riboseを、thymineと2-deoxy-D-riboseと同時に投与すると低酸素下でのアポトーシスに対する耐性効果が抑制されることがわかった。これらの所見は、TPによるthymidineの代謝産物が、低酸素によって生じるアポトーシスを阻害することを示している。PD-ECGF/TPの発現は固形腫瘍の進展において重要な役割を担っており、TP阻害剤やthymidineの代謝産物の誘導体は、血管新生活性とアポトーシス抑制作用を阻害することにより、腫瘍の増殖を抑制する可能性がある。