ABSTRACT 1136(P4-6)
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変異 p21 (Waf1/Cip1/Sdi1) 発現による p53 依存性アポトーシスの誘発:陸 王炎 君、武部 啓、八木孝司(京大・医・放射線遺伝、現 近畿大・原研)

Enforcement of p53-dependent apoptosis by mutated p21Waf1/Cip1/Sdi1 : Yanjun LU, Hiraku TAKEBE, and Takashi YAGI (Dept. of Radiat. Genet., Grad. Sch. of Med., Kyoto Univ.)

[目的]p21 (Waf1/Cip1/Sdi1) は p53 によって誘導発現される蛋白であり、CDK や PCNA と結合してそれらの活性を抑制し、DNA複製阻害や G1 アレストを起こす。また癌抑制遺伝子の1つとも考えられているが、腫瘍においてその変異の頻度は低い。これまでに我々は p53 によって誘導発現される p21 がX線やアドリアマイシンによるアポトーシスを抑制することを示し、その機構を研究してきた(Oncogene, 16, 705, 1998)。本研究の目的はこれまでの研究で見いだした 140 番コドンに変異 (Arg→Gly) を持つ p21 がアポトーシスに関与していること証明することである。この変異 p21 は CDK とは結合せず、CDK のリン酸化活性も阻害しないが、PCNA とは結合する。
[結果と考察]正常 p21 を LacSwitch によって発現させた細胞 (DLD-1) に正常 p53 をトランジエントに発現させても増殖が停止するだけであるが、変異 p21 を発現させた細胞に正常 p53 をトランジエントに発現させるとアポトーシスが起った。正常 p53 を発現させた細胞に変異 p21 をトランジエントに発現させるとアポトーシスが起った。正常 p21 を発現させた細胞に変異 p21 をトランジエントに発現させると増殖停止が解除され、アポトーシスも起こらなかった。正常 p53 を持つ癌細胞 (p39, G361) に変異 p21 をトランスフェクトするとアポトーシスが起ったが、変異 p53 を持つ癌細胞 (DLD-1, DU145) では起らなかった。これらの結果は変異 p21 は p53 存在下で正常 p21 に対してドミナントネガティブに働き、増殖停止を解除し、アポトーシスを誘発することを示す。癌細胞で p21 の変異が少ない理由は p53 存在下(=正常細胞)で p21 が変異するとアポトーシスが起こり、細胞が除去されるためであると我々は考えている。