ABSTRACT 1140(P4-6)
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ヒト胎児性癌細胞のアポトーシスにおけるHSP90の分子機構:松岡健太郎1,2, 南雲春菜1, 山田健人1, 橋口明典1, 富岡大策1, 秦 順一1(1慶大・医・病理, 2国立小児病院・病理)

Molecular mechanisms of heat shock protein 90kDa in apoptosis of human embryonal carcinoma cells.: Kentaroh MATSUOKA1,2, Haruna NAGUMO1, Taketo YAMADA1, Akinori HASHIGUCHI1, Daisaku TOMIOKA1, Jun-ichi HATA1(1Dept Pathol., Keio Univ., 2Natl. Children Hsp.)

初期胚発生においてプログラム細胞死が胚盤胞の管腔形成や内部細胞塊の消長を制御していることが知られている。われわれはヒト初期胚発生におけるアポトーシスの分子機構を解析するために、ヒト胎児性癌(EC)細胞のアポトーシス実験系を確立し、その分子機構についてHSP90を中心に解析した。ヒトEC細胞(G3, NT2)はレチノイン酸(RA)処理後、48時間で約20-30%の細胞がnick end labelおよびAnnexin V陽性となり、形態学的にもクロマチン凝集、核断片化を示した。その際、HSP90の発現が蛋白レベルで48時間以内に急速に低下した。またHSP90を標的とする拮抗物質であるgeldanamycinによりヒトEC細胞を処理したところ、きわめて低い濃度(8.3ng/ml)で90%以上の細胞にアポトーシスが出現した。そこでHSP90発現ベクターをNT2細胞へ導入し、同分子を高発現するクローンを得た。これらのクローンはRA(2x105M)処理によるアポトーシスに対して抵抗性を示した。次にHSP90と会合するアポトーシス関連蛋白を免疫沈降法にて解析したところ、HSP90は p53とc-rafと会合することが明らかとなった。さらに、このp53について、その変異の有無をRT-PCR後シーケンスにて検討したところ、ヒトEC細胞ではp53の変異は見出されなかった。これらの結果は胎児性癌細胞におけるアポトーシスが、HSP90により制御されていることを示し、特に野生型p53やc-rafとの会合が見られたことは、HSP90がp53やc-raf/Badを介したアポトーシスに関与する可能性が示唆された。