ABSTRACT 1144(P4-6)
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SCID-huマウスによるヒト小腸の放射線誘発アポトーシスの解析:京泉 誠之、林 奉権、瀬山 敏雄(放影研・放生部)

Analysis of apoptosis in human small intestine using SCID-hu mice: Seishi KYOIZUMI, Tomonori HAYASHI, Toshio SEYAMA (Dep.of Radiobiol., Rad.Effects Res. Found.)

[目的]小腸クリプト幹細胞は放射線に高感受性であることが知られている。マウスの小腸クリプト細胞は、SCIDマウスに皮下移植された後も低線量(0.5Gy以下)のX線で短期時間(6時間)に高頻度のアポトーシスが誘発される。一方、SCIDマウスに皮下移植されたヒト小腸は、高線量(10Gy以上)でも短時間ではほとんどアポトーシスは誘発されない(昨年度本学会)。今回我々はヒト小腸のアポトーシスをさらに長期にわたって観察するとともに、アポトーシス関連タンパクの発現を免疫組織染色により解析した。[結果]SCIDマウスに移植されたヒト小腸に0.5-10GyのX線を照射し、クリプト切片当たりのアポトーシスを示す細胞の数を測定した。照射後2日目までは10Gyにおいてもアポトーシスは低頻度(0.2cells/crypt section)であったが、3日目以降増加し、5日前後でピークに達した(0.9 cells/crypt section)。一方、低線量(1Gy以下)ではピーク時においてもアポトーシスは低頻度であった。また、高線量照射後3日目から大型の核を持つ細胞群がクリプト底部に多数観察された。クリプト底部におけるP53およびBaxの発現は照射後3時間から上昇し、5日間以上にわたって持続した。一方、Bcl-2は照射後6時間をピークとし、その後減少し2日目にはほとんど検出されなくなった。[考察]ヒト小腸の放射線誘発アポトーシスの感受性およびカイネティックスはマウスと異なり、高線量を必要とするとともに照射後3日目以降に上昇することがわかった。それ以前にアポトーシスが低いのは、Bcl-2による抑制がその原因かも知れない。また、大型の細胞核を持つクリプト細胞の細胞周期ステージとアポトーシスとの関連が今後の課題である。