ABSTRACT 1151(P4-6)
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グリオーマにおける Fas ligand (FasL) 発現の解析:増岡淳, 一ノ瀬誠, 峯田寿裕, 白石哲也, 田渕和雄(佐賀医大・脳外, 共愛会共立病院・脳外

The analysis of Fas ligand (FasL) expression in human glioma : Jun MASUOKA, Makoto ICHINOSE, Toshihiro MINETA, Tetsuya SHIRAISHI1, Kazuo TBUCHI (Dept. of Neurosurgery, Saga Med. Sch., Kyouaikai Kyouritsu Hosp1.)

(目的) Fas/Fas ligand (FasL) 系は、アポトーシス誘導機構の一つであり、Fasを発現している感受性細胞では抗Fas抗体やFasLにより細胞死が誘導される。これまで我々は Fas/FasL 系を利用した悪性脳腫瘍の治療に関する報告を行ってきた。しかし一方では、最近 FasL はある種の腫瘍細胞にも発現しており、腫瘍組織への 免疫細胞の浸潤を阻害し免疫租界形成に関与している可能性が報告されている。今回我々はグリオーマにおける FasL の発現を検討し、脳腫瘍における FasL を介した免疫租界についての解析を行った。(方法) T98G, A172, U-87MG, U-251, U-373 ヒトグリオーマ細胞5株、および生検グリオーマ組織11例の FasL 発現をWestern blottingにて検討した。また、上記11例のホルマリン固定パラフィン包埋した標本の連続切片において、Fas、Fas L、およびT-cell について免疫組織化学染色を行った。(結果) グリオーマ細胞株では5株すべてに、生検グリオーマでは11例中10例に FasL の発現を Western blotting にて認めた。免疫組織化学染色では全例で Fas は染色されたが、FasL は4例のみで染色された。また、FasL で染色される症例では、新生血管内皮が強く染色され、しかもその周囲の腫瘍組織への T-cell 浸潤が少ない傾向がみられた。(結論) グリオーマ細胞株および生検グリオーマにおいて Fas L の発現を認めた。FasL の発現部位の一つに腫瘍新生血管内皮があり、T-cell の血管外漏出を抑制している可能性が示唆され、脳腫瘍組織においては腫瘍のみならず血管内皮レベルでの免疫租界を形成していることが推測された。