ABSTRACT 1152(P4-6)
早期大腸腫瘍の形態形成に対するアポトーシスとその関連遺伝子産物の検討:渡 二郎,横田欽一,斉藤裕輔,綾部時芳,蘆田知史,小原 剛,高後 裕(旭川医大・3内)
Morphogenesis of early colorectal cancers is dependent on apoptotic fraction: Jiro WATARI, Kinichi YOKOTA, Yusuke Saitoh, Tokiyoshi AYABE, Toshifumi ASHIDA, Takeshi OBARA, Yutaka KOHGO (Third Dept. of Int. Med., Asahikawa Medical College)
【目的】早期大腸腫瘍の形態形成に関与する因子についての報告はない.今回,細胞増殖と細胞消失 (アポトーシス)の観点から解析し,アポトーシスとその関連遺伝子の発現との関連を明らかにする.【対象】大腸腺腫61病変,早期大腸癌49病変である.肉眼型は隆起型 (P型) 38病変,表面隆起型 (F型) 36病変,表面陥凹型 (D型) 38病変である.【方法】増殖細胞とアポトーシス細胞の検出にはKi-67染色とin situ nick-end labelling法を用いた.さらに,アポトーシス関連遺伝子の発現はp53 (Do-7),Bcl-2 (124),Bax (P-19)を用い免疫組織学的に検討した.【結果】(1) 増殖分画 (PI)は組織異型度が増すにともに増大したが,アポトーシス分画 (PI)には差を認めなかった.しかし,PIとAIは有意な正の相関を示した (P<0.005).(2) 腺腫,癌ともにPIは,各肉眼型に差を認めなかったが,AIではD型がP型,F型より有意に大きく,AI/PI 比もD型が他の肉眼型に比べて有意に大きかった (P<0.01).(3) p53の発現は腺腫 (8.1%)に比べて癌 (51.0%)で有意に高かった (P<0.0001)が,逆にBcl-2の発現は腺腫 (50.8%)が癌 (32.7%)よりも高かった (P=0.06).一方,Baxの発現には,組織異型度による差はなかった.(4) 癌においてp53の発現陽性のものは陰性のものに比べてPIは有意に高かった(P<0.005)が,AI,AI/PI 比に差は認めなかった.また,Bcl-2,Baxの発現とPI,AIに相関は認めず,p53発現下におけるBaxの発現とこれらのparameterの間にも相関は認めなかった.【結論】早期大腸腫瘍の形態形成には,増殖分画に対するアポトーシス分画の相対的な比が関与している.しかし,進行大腸癌と異なり早期の大腸腫瘍におけるアポトーシスには,p53,Bcl-2やBaxの蛋白発現との相関は認めなかった.