ABSTRACT 1250(P4-10)
哺乳類組織のテロメラーゼ活性:角尾進悟1、浅岡一雄2、田原栄俊1、井出利憲1(1広島大・医・薬、2京大・霊長類研)
Telomerase activity in mammalian tissues: Shingo KAKUO1, Kazuo ASAOKA2, HIdetoshi TAHARA1 and Toshinori IDE1 (1Dept. Cell. Mol. Biol., Hiroshima Univ. Sch. Med., 2Primate Res. Inst., Kyoto Univ.)
【目的】ヒトの体内組織のうち大部分の体細胞組織にはテロメラーゼ活性がなく、生殖巣や生理的再生組織で活性が検出されるのみである。これに対して、げっ歯類では肝臓などの組織にもテロメラーゼ活性があり、活性の分布がヒトの場合と大きく異なることがわかっている。テロメラーゼとテロメア長は生命の基本的な機構であり、それが同じほ乳類であるヒトとマウスで異なることは興味深いことである。また、このことから目的によっては、マウスはテロメラーゼ研究のヒトモデルとして使用できない可能性があり、新たなモデルを探索する意味でヒトと同じ霊長類に属するサルの様々な組織についてテロメラーゼ活性を測定した。【方法】アカゲザル、ニホンザル、カニクイザルの各組織より抽出液を調製し、 TRAP 法 および TRAP - HPA 法によりテロメラーゼ活性を測定した。【結果】げっ歯類では、マウス、ラット、ハムスターの複数の系統で、脳や筋肉できわめて弱いほかは、多くの体細胞組織に強い活性があった。しかし、サルでは生殖巣、脾臓、消化管組織で強い活性が検出されたが、他の組織においては活性がほとんど検出されず、活性のあると思われるものも非常に弱い活性であった。このような活性の分布はヒトと類似するものである。このことからサルはテロメラーゼ研究におけるヒトのモデルとして使用できる可能性が示唆された。