ABSTRACT 1251(P4-10)
テロメラーゼの口腔領域各種臨床検体への応用に関する検討:住田知樹, 杉田敦郎, 根津賢司, 阿部康人, 木藤克巳, 植田規史(愛媛大・医・一病理)
Application of the telomerase assay for the detection of human oral lesions: Tomoki SUMIDA, Atsuro SUGITA, Kenji NEZU, Yasuhito ABE, Katsumi KITOU, Norifumi UEDA (1Dept. of Pathol., Ehime Univ. School of Med.)
<目的>テロメラーゼは細胞の不死化、癌化に関わる酵素であり、種々の悪性腫瘍で高頻度に活性が確認されている。また、ヒトにおけるテロメラーセの構造はある程度解明され、鋳型RNA部分であるhTRと、hTRT、TP1という2つの関連蛋白からなることが分かっている。これらのパラメーターの測定が口腔領域の各種病変の診断に応用可能かどうかについて検討を行った。
<方法>生検、手術、剖検時に得られる各種口腔病変を用いてTRAP法にてテロメラーゼ活性を測定した。また、悪性腫瘍を含む各種病変を有する患者の洗口液、胸水や腹水中の細胞成分、手術時に得られる郭清リンパ節等についても同様に測定した。また、得られる組織量の十分なものについてはテロメラーゼの各構成因子についてRT-PCRにて測定を行った。
<結果及び考察>摘出標本については悪性腫瘍では94%に、良性病変では39%に明瞭な活性を認めた。各構成因子の発現ではhTR、TP1は悪性、正常を問わず全例に発現を認めたが、hTRTはテロメラーゼ活性と比較的よく相関した。洗口液、胸水、腹水では、それぞれの採取部位に悪性腫瘍が存在する患者でテロメラーゼ陽性の症例をいくつか認めたが、検体中へのPCR反応の阻害物質の混入が考えられ、陽性率は低かった。郭清時に得られるリンパ節では、組織学的に転移の明らかなものでは明瞭な活性を認めるものが多かったものの、正常リンパ節にてもある程度の活性を認め、両者を明確に鑑別するには至らなかった。テロメラーゼアッセイは口腔内の新鮮組織においてはよく病態を反映する結果が得られた。洗口液、胸水、腹水等では阻害物質の影響を少なくし診断率を向上させる必要があると思われた。リンパ節においては転移の判定には厳密な半定量的解析が必要と思われた。