ABSTRACT 1267(P4-11)
培養細胞を用いたヒト大腸発癌におけるWntシグナル活性化機構の解析:阪埜浩司1,河口徳一2,八尾良司1,時永賢治1,伊藤正紀1,北川知行2,野田哲生1,3(癌研・1研・細胞生物、2研・病理、3東北大・医・分子遺伝)
Analysis of Wnt signaling activation in the process of human colorectal carcinogenesis :Kouji BANNO1,Tokuichi KAWAGUCHI2,Ryouji YAO1,Kenji TOKINAGA1, Masaki ITO1,Tomoyuki KITAGAWA2,Tetsuo NODA1,3(1Dept. Cell Biol., 2Dept. Pathol., Cancer Institute., 3Dept.Mol.Genet.,Tohoku Univ.Sch.Med.)
【目的】Wntシグナルの活性化とヒト大腸発癌との関与を培養細胞を用いβ-catenin及びTCF-4に注目して解析する。
【方法】ヒト大腸癌由来細胞株5種及び当研究所で樹立したヒト大腸腺腫由来細胞株5種(うち1種はアルキル化剤処理したSubline)におけるβ-cateninの局在を免疫染色で解析した。次にこれら細胞株のTCF-4による転写活性をreporter plasmidを用いたluciferase assayにより解析した。さらに野生型、変異型のβ-cateninや、TCF-4をco-transfectionにより過剰発現させ、TCF-4による転写活性の変化を検討した。又、血清刺激による変化も検討した。
【結果】全てAPC-の大腸癌由来細胞株では核や細胞質にもβ-cateninの局在が認められたのに対し、大腸腺腫由来細胞株においては、細胞間接着面にのみ強染した。大腸癌由来細胞株において有意に高いTCF-4転写活性を示したが、大腸腺腫由来細胞株ではその1/10程度の活性であった。更にこの大腸腺腫由来細胞に野生型および変異型のβ-catenin、TCF-4などを発現させてもTCF-4転写活性の上昇はみられなかった。又、血清刺激においても変化は認められなかった。
【考察】ヒト大腸発癌過程において腺腫と浸潤癌ではTCF-4の転写活性に大きな差が生じていると推測された。