ABSTRACT 1277(P4-12)
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サイクリンD1過剰発現ラット繊維芽細胞のFGFによる癌形質発現: 岡嵜晶1,梅澤一夫1,土岐祐一郎2,I.BernardWeinstein3,井本正哉1 (1慶大・理工・応科,2阪大・医・2外,3Columbia Univ.)

Induction of transformed properties by FGF in cyclin D1-overexpressing rat fibroblasts : Aki OKAZAKI1, Kazuo UMEZAWA1, Yuichiro DOKI2, I.B.WEINSTEIN3 , Masaya IMOTO1 (1 Dept. Applied Chem., Fac. Sci. Tech., Keio Univ. 2Dept. Surg. II, Osaka Univ. 3Columbia Univ.)

[目的] サイクリンD1は多くのヒト癌細胞で過剰発現が観察されるが、サイクリンD1の過剰発現だけでは細胞を癌化できないことから、サイクリンD1は他の因子と共同して癌化に関わると考えられる。一方、我々はサイクリンD1の過剰発現がFGF受容体を up regurate していることを見いだしたことから、本研究ではサイクリンD1過剰発現とFGFシグナルが共同して細胞の癌形質発現に関わっている可能性について検討した。
[結果] サイクリンD1を安定的に過剰発現させたラット繊維芽細胞は、そのベクターコントロール細胞に比べてFGF受容体の発現量が高く、FGFによるMAP kinase familyの活性化能が上昇した。また、ボイデンチャンバーを用いてマトリゲルに対する in vitro 浸潤実験を行ったところ、サイクリンD1過剰発現細胞はFGF刺激により著しい浸潤能の上昇が見られた。このとき、FGFによる運動能の昂進が観察された。さらに、polyHEMAを用いて増殖因子による足場非依存性増殖を検討したところ、コントロール細胞では増殖因子による足場非依存増殖は誘導されなかったが、サイクリンD1過剰発現細胞はEGFとFGFの共存下で著しい足場非依存増殖が誘導された。
[結論] サイクリンD1の過剰発現は浸潤や異常増殖に関わるFGFに対する応答能を上昇させることにより癌の増悪化に関わっていることが示唆された。