ABSTRACT 1283(P4-12)
インターロイキン依存性リンパ球細胞増殖におけるpRBファミリー蛋白および転写因子E2Fファミリー蛋白の役割: 盛 暁生,星川 裕,畠山昌則(癌研・研・ウイルス腫瘍部)
Roles of pRB family proteins and E2F family-transcriptional factors in interleukin-dependent lymphoid cell proliferation:Akio MORI, Yutaka HOSHIKAWA, Masanori HATAKEYAMA (Dept. of Viral Oncol., Cancer Inst. )
(目的) 網膜芽腫癌抑制遺伝子産物(pRB)はその下流標的分子である転写因子E2Fとの結合を介して細胞増殖を抑制する。pRBならびにE2Fには各々構造的に類似したファミリー蛋白が存在する。われわれはインターロイキン(IL)により引き起こされるリンパ球増殖においてpRBおよびE2F各ファミリー蛋白がはたす役割を検討することを目的として以下の解析を行った。
(方法および結果) 改変型テトラサイクリン制御プロモーターにより外来遺伝子の発現を制御できる発現誘導系を構築し、これをIL(IL-2 ないしIL-3)依存性マウスプロB細胞株に導入した。この細胞株では野性型およびリン酸化抵抗性変異型pRBのいずれの過剰発現誘導にもかかわらず、非誘導時に比べてILに対する応答性に有意な変化は認めなかった。一方pRBファミリー蛋白の1つであるp130の発現誘導によってIL依存性細胞増殖は強力に抑制された。p130のE2F結合領域、サイクリン結合領域に各々変異を加えた変異型p130を発現させたところ、この抑制にはE2F結合領域を必要とすることが示された。またE2F結合領域を有するDNAを標識プローブとして用いたゲルシフト分析の結果、この細胞株ではp130に強い親和性を持つE2F-4がE2Fファミリー蛋白の主体をなすことが示された。さらにE2F-4の持続的過剰発現によりこの細胞株の細胞増殖はIL非依存性になることが確認された。以上のことからIL刺激を介するリンパ球細胞増殖は、これまで細胞周期の制御に必須と思われていたpRBではなく、p130によってその制御が担われていることが示唆された。またその機序として、この細胞株においてはp130と選択的に結合するE2F-4がE2Fファミリー蛋白の主体をなしていることが考えられた。