ABSTRACT 1297(P4-12)
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温度感受性変異株tsJT663細胞の変異機能が影響を与える遺伝子の探索:田口貴史、井出利憲(広島大・医・薬)

Increased expression of CDI genes in a cell cycle ts mutant, tsJT663, at the nonpermissive temperature:Takashi TAGUCHI, Toshinori IDE (Dept. Cell. Mol. Bio., Hiroshima Univ. Sch. Med.)

【目的】ラットの培養細胞由来の温度感受性変異株tsJT663は、許容温度(34℃)では正常に増殖するが、非許容温度(40℃)ではG0期からS期への進行及び細胞周期内の進行も阻害され、増殖停止状態で長期間安定に生存する変異株である。これまでにtsJT663細胞の変異機能が影響を与える遺伝子についてほとんど知られていなかった。今回、tsJT663細胞の40℃での増殖停止機構に影響を与える遺伝子の探索を行った。
【方法】tsJT663細胞を34℃で0.1%FBS存在下での培養により、G0期に同調した。その後、10%FBSを添加と同時に34℃と40℃で培養し、経時的に細胞を回収してノーザン、ウエスタン、Flowcytometoryにより細胞周期の解析を行った。
【結果及び考察】G0期に同調したtsJT663細胞を血清刺激によりS期に誘導した結果、40℃でも初期遺伝子(fos,jun,myc,egr-1)の発現には影響がなかった。G1cyclin,cdkをみると、40℃でCyclinD3,Cdk2βのタンパクレベルでの蓄積低下がみられた。増殖抑制に関係するCdk  inhibitorの中で、p18とp27は40℃で血清刺激後5時間目より発現が強く誘導されていた。さらにLog phaseの細胞を40℃にShift upしても、p18とp27発現誘導がみられた。この結果より、tsJT663細胞の変異機能がp18とp27の発現を誘導及びCdkの活性を抑制することにより、40℃での増殖停止に至るのではないかと考えられた。