ABSTRACT 1310(P5-1)
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変異型転写因子 mi-MITF が示すドミナント・ネガティブな性格:伊藤彰彦1,実宝智子1,森井英一1,野島博2,北村幸彦11阪大・医・病理,2阪大・微研・分子遺伝)

Dominant negative nature of MITF generated by mi-mutation:Akihiko ITO1, Tomoko JIPPO1, Eiichi MORII1, Hiroshi NOJIMA2, Yukihiko KITAMURA1 (1Dept. of Pathol., Med. School, 2Dept. of Mol. Genet., Res. Inst. Micro. Dis., Osaka Univ.)

[緒言] bHLH-Zip 型転写因子 MITF はマスト細胞において癌原遺伝子 c-kit を含むいくつかの遺伝子の転写活性化に重要である。MITF 遺伝子における mi 突然変異は塩基領域における1アルギニンの欠失でこの翻訳産物 (mi-MITF)は DNA への結合能力及び核移行能を欠き転写因子として機能し得ない。この変異のホモ個体マウス (mi/mi) とMITF-ノック・アウト・マウス (tg/tg) とを MITF が関与する転写制御の点で比較した。[方法・結果] 野生型 (+/+) 、mi/mi 及び tg/tg マウス由来培養マスト細胞 (CMC) を用いて二つのサブトラクション cDNA ライブラリー (+/+ -mi/mi、+/+ - tg/tg) を作製し、mi/mi- 及び tg/tg-CMC において転写障害を受けている遺伝子の数を比較した所、mi/mi-CMC の方が明らかに多かった。次に、mi/mi-CMC において著しく転写レベルの低下を来している7遺伝子について tg/tg-CMC における mRNA 発現を調べた。4遺伝子(MMCP-2、-4、-5、-6) は tg/tg-CMC においても著しい転写障害を認めたが、3遺伝子 (グランザイムB、トリプトファン・水素化酵素、c-kit) ではその障害の程度は軽度だった。 tg/tg-CMC が示す殺細胞活性、セロトニン含有濃度、SCF に対する増殖応答は mi/mi-CMC より +/+-CMC のそれに近かった。[結論] MITF による標的遺伝子転写活性化には直接的作用が主なものと間接的作用が主なものとがあり、後者では mi 突然変異 の翻訳産物 mi-MITF がドミナント・ネガティブな性格を示すことが分かった。