ABSTRACT 1317(P5-1)
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癌抑制遺伝子WT1の機能発現調節: 田所惠子1, 林泰秀2, 山田正夫11小児医療研セ・遺伝, 2東大・医・小児)

Regulation of expression and function of the WT1 gene: Keiko TADOKORO1, Yasuhide HAYASHI2, Masao YAMADA1 (1Dept. Genetics, Natl. Children's Med. Res. Ctr., 2Dept. Pediatrics, Fac. Med., Univ. Tokyo)

ウィルムス腫瘍の原因遺伝子の一つとしてクローニングされたWT1遺伝子は、ZnフィンガーDNA結合ドメインをもつ転写制御因子として機能すると考えられている。我々はWT1の機能発現の細胞内経路を解く目的で、WT1が転写制御を行う細胞内ターゲットの検索、およびWT1自身を制御する遺伝子産物の検索を行ってきた。これまでにWT1が種々の細胞増殖・分化関連遺伝子を転写制御すること、またWT1プロモーターがp53によって強力に転写抑制されることを見い出している。今回、WT1と物理的に結合することが知られているp53についてWT1の転写制御能に及ぼす影響を検討したところ、野生型p53の発現下ではWT1の転写抑制能が減弱し、変異型p53の発現下ではWT1の転写抑制能が強力に発揮されることを見い出した。一方、種々の腫瘍細胞株において野生型p53蛋白とWT1 mRNAの発現量に逆相関を認めた。これらのことは野生型p53存在下ではWT1の発現が抑えられるだけでなくWT1の機能発現も抑えられるが、変異型p53の存在下ではWT1が発現しその機能を発揮することを示唆している。既に報告されているWT1によるp53の機能調節に加え、我々の結果は、WT1自身がp53との関わり合いの中でその発現や転写制御能を調節されることにより、種々の増殖・分化・アポトーシス関連遺伝子を普遍的に転写制御し、細胞増殖・分化に関わっている可能性を示唆している。