ABSTRACT 1318(P5-1)
癌抑制遺伝子産物WT1と結合する新規Sry関連蛋白質の構造異常と胚細胞腫瘍:仙波憲太郎, 大崎江美子(東大・医科研・細胞化学)
Aberrant splicing of a novel Sry-like gene in human germ cell tumor: Kentaro SEMBA, Emiko OSAKI (Dept. of Cellular and Molecular Biology, The Inst. of Med. Sci., Univ. of Tokyo)
ウィルムス腫瘍の癌抑制遺伝子として単離されたWT1は、腎臓のみならず生殖器の発生と形成異常にも関与することが知られている。我々は昨年度の本学会でWT1と結合する新規遺伝子(クローン#125)をクローニングし、1)この遺伝子が性決定遺伝子SryのDNA結合ドメインであるHMG boxと59%の相同性を有し、精巣、特に胚細胞に強く発現すること、2)胚細胞の腫瘍である精上皮腫ではHMG boxを欠失させるようなスプライシングが見られることを報告した。今回、精上皮腫(13例)、胎児性癌(3例)、卵黄嚢腫瘍(1例)、絨毛癌(1例)について詳細な検討を行った結果、精上皮腫のみならずその他の組織型を示す胚細胞腫瘍でも同様の異常スプライシングを見い出した(18例中17例)。このスプライシングは原発巣だけではなく転移巣においても検出された(2例中2例)。したがって、#125の異常スプライシングは胚細胞腫瘍の検出、同定に利用できる可能性が示された。
#125蛋白質は5'-ACAAT-3'という特異的な塩基配列に結合することから、正常型#125蛋白質およびHMG boxを欠失した蛋白質の結合配列依存的な転写制御活性について検討を進めている。また、WT1と#125の結合の様式および意義についても議論したい。