ABSTRACT 1411(P5-7)
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サイクリンD1の高発現は細胞外基質分解能を亢進する: 荒戸照世1,佐和弘基2,鎌田 一3,永松信哉1(杏林大・医・12生化,2脳外,3北斗病院)

Overexpression of cyclin D1 correlates with invasive stage of tumor progression: Teruyo ARATO1, Hiroki SAWA2, Hajime KAMADA3, Shinya NAGAMATSU1 (12nd. Dept. Biochem. and 2Dept. Neurosurg. Kyorin Univ. 3Hokuto Hospital)

(目的)サイクリンD1は多くの上皮性,非上皮性腫瘍で遺伝子増幅や染色体転座による発現の亢進がみられるが,その過剰発現だけでは癌化を誘導しない.それゆえ癌の悪性化に関与していると考えられるが,不明の点も多い.今回私達はヒトグリオーマ細胞U87MGにサイクリンD1を高発現させた細胞を作成しその機能を解析した.(方法)サイクリンD1の発現はImmunoblottingにより確認した.細胞増殖は増殖曲線から,増殖相の大きさはMIB-1抗体による染色を行い検討した.S期細胞はBrdU標識陽性細胞のカウントとフローサイトメトリーにより測定した.細胞の運動性は傷つけアッセイにより,マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の活性はザイモグラフィーにより測定した.(結果)サイクリンD1高発現細胞は親細胞にくらべ 1)予想に反して,細胞増殖が抑制されていた.2)増殖相が大きくなっていた.3)10%血清存在下ではS期への移行とDNA合成終了に遅延が見られたが,非存在下ではS期細胞が多くなっていた.4)細胞の運動性が約1.4倍亢進し,より分散(scatter)がおこっていることが観察された.5)proMMP-2ならびにMMP-2の活性が増大した.(結論)サイクリンD1は細胞増殖相の大きさを調節するのみならず,細胞の運動性や細胞外基質分解能を亢進し,浸潤・転移といった癌の悪性形質と関連していることが示唆された.