ABSTRACT 1413(P5-7)
ラパマイシンは癌抑制遺伝子p53の機能異常のある細胞に選択的にアポトーシスを誘導する:細井 創1, 四方卓磨1,2 松村隆文1, 澤田 淳1, Peter J Houghton2(1京都府立医大・小児, 2St. Jude Children's Research Hospital・Molecular Pharmacology)
Inhibition of the mammlian target of rapamycin (mTOR) selectively induces apoptosis in cells lacking p53 tumor suppressor function.:Hajime HOSOI1, Takuma SHIKATA1,2, Takafumi MATSUMURA1, Tadashi SAWADA1, Peter J HOUGHTON2 (1Dept. of Pediatr., Kyoto Pref. Univ. of Med., 2Dept of Mol. Phar., St. Jude Children's Res. Hosp.)
昨年の本学会シンポジウムで我々は、ラパマイシンがその標的蛋白mTORのセリン/スレオニンキナーゼ活性を阻害し、その下流にある翻訳開始因子抑制蛋白PHAS-1(eIF4E-BP1)を脱リン酸化(不活化)し、細胞増殖調節蛋白の翻訳を特異的に抑制することによって、増殖中の癌細胞にG1細胞周期停止を引き起こすことを報告した。その後我々は,癌抑制遺伝子p53の変異を持ち、無血清条件下でインスリン様成長因子II(IGF-II)の自己分泌により増殖するヒト横紋筋肉腫細胞株でラパマイシンがG1細胞周期停止だけでなくアポトーシスをも誘導することを見いだした。アポトーシスはラパマイシン耐性変異mTORの発現によって回避された。さらにp53ならびにRbノックアウトマウス由来の胎児線維芽細胞ではラパマイシンはRbの正常機能(Rb+/+)とp53の欠損(p53-/-)のある細胞に選択的にアポトーシスを誘導した。以上より、ラパマイシンによるアポトーシスでは細胞はまずG1期に停止しなければならないこと、この時点の細胞周期停止でp53とmTORは細胞生存に機能していることが示唆された。mTOR伝達路の解明はp53変異を持つ腫瘍細胞に選択的にアポトーシスを誘導する新しい抗癌剤の開発に貢献するかもしれない。