ABSTRACT 1415(P5-7)
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細胞分裂を制御するM期カイネース遺伝子ヒトAIM1のクローニング、マッピングならびに癌細胞における発現異常の検討:達家雅明1、片山博志1,太田隆英2,寺田泰比古1,田中卓二2,小田島粛夫2,鈴木文男11広島大・原医研・放射線応答,2金沢医大・医・病理)

Multinuclearity and increased ploidy caused by overexpression of the AIM1 mitotic kinase in human cancer cells : Masaaki TATSUKA1, Hiroshi KATAYAMA1, Takahide OTA2, Yasuhiko TERADA1, Takuji TANAKA2, Shizuo ODASHIMA2, Fumio SUZUKI1 (1Dept. of Regul. Radiobiol., Res. Inst. Radiat. Biol. Med., Hiroshima Univ., 2Dept. Pathol., Kanazawa Med. Univ.)

[目的]がん細胞の多くは染色体倍数に異常が見られ、多核細胞が一定の頻度で観察される。また、染色体の分配が不均衡で、数的な異常を有する場合が多い。すなわち、がん細胞では染色体の有糸分裂を制御する機構に何らかの欠陥が存在する可能性が高い。我々は、そういった異常の原因となるM期制御因子の遺伝子を同定することを目的として、酵母やハエなどで染色体分配に異常を来す変異体を相補する遺伝子の哺乳類ホモローグのクローニングを行なってきた。本研究では、我々が新規にクローニングしたM期キナーゼ遺伝子ラットAIM1のヒト・ホモローグを同定し、ヒトAIM1遺伝子のヒトがんにおける役割を検証することを目的とした。
[方法と結果]ヒトにおけるAIM1関連遺伝子をスクリーニングするため、すでに単離しているラットAIM1のセリン/スレオニン・キナーゼのドメインVIとVII領域を用いてregenerated primerのセットを作成し、遺伝子増幅(PCR)を行なった。その結果、ヒトでは少なくとも2種類のAIM1関連遺伝子が存在することが明かとなった。そのひとつは乳がんで遺伝子増幅が報告されているBTAK/AIKであり、もうひとつはAIM1の構造的なヒト・ホモローグであった。ヒトAIM1の細胞への発現誘導実験を、テトラサイクリン発現調節システムにより行なったところ、カイネース・ドメインのATP結合部位変異体 (K/R変異体:カイネース・ネガティブ型)の発現により、細胞は分裂を失敗し、多核化した。この表現型はラットAIM1と同様であり、機能的なホモローグであることがわかった。また、正常AIM1の高発現によっても、一定頻度の多核を生じ、その娘細胞では核の融合がしばしば見られ、染色体倍数性の変化を誘導することが示唆された。すなわち、AIM1の高発現はドミナント・ネガティブ効果を発揮する。そこで、ヒトがんにおける発現を調べたところ、多核や多倍体化を高頻度に起こす大腸がんやその他のがん細胞株で、正常二倍体細胞と比較して、ヒトAIM1の非常に高い発現が観察された。一方、FISHによる染色体マッピングの結果、p53やABR、CRKがマップされて、染色体欠失が高頻度に起こる17p13にヒトAIM1 (HAIM1)はマップされた。以上の結果、ヒトAIM1遺伝子はその発現異常を通じてがん細胞の染色体量衡異常を誘導している決定因子のひとつである可能性が高い。