ABSTRACT 1419(P5-7)
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RB遺伝子、p21遺伝子の発現調節系による骨肉腫細胞株での分化誘導機構の解析:神裕道1、大川恵三2、横田淳、土田成紀2(1弘前大・医・整形、2同・2生化、3国立がんセ・研・生物)

Analysis of differentiation by RB and p21 induction in an osteosarcoma cell line: Hiromichi JIN1, Keizou OOKAWA2, Jun YOKOTA3, Shigeki TSUCHIDA2 (1Dept. of Orthop. Surg. and Second Dept. of Biochem.2, Hirosaki Univ. Sch. Med., 3Biol. Div., Natl. Cancer Ctr. Res. Inst. )

RB遺伝子のがん細胞における不活化の生物学的意義とその作用機構を明らかにするために、我々はこの遺伝子が不活化しているSaos-2骨肉腫細胞株に発現調節可能な系で遺伝子を導入し、作用機構を解析している。これまでRB発現誘導で細胞増殖抑制の他に、fibronectin蛋白の発現低下とALP活性増加を認め、分化誘導能を示唆する知見を得ている。今回さらにその作用と機構を明らかにするため、collagen type I (Col.I) やosteonectin (ON) などの骨化マーカー遺伝子、転写因子cbfa1、vitamin D receptor (VDR) やretinoic acid receptor-alpha (RARa) などの核内レセプター等、骨芽細胞の分化に関連する遺伝子発現についてRB発現誘導株4クローンで調べた。その結果、RB発現誘導96時間後にはCol.IとONのmRNAは約2倍に増加し、分化傾向を示していた。一方、cbfa1遺伝子の発現は増加せず、VDRとRARaのmRNAの発現にも大きな変化は認めなかった。また、RBと同様に発現誘導で細胞増殖が抑制されるp21発現誘導細胞株3クローンでも同様の解析を行った。その結果、Col.IとONの増加はなく、cbfa1は40%以下に減少し、VDRは増加、RARaは減少する傾向を認めた。以上より、骨肉腫細胞株Saos-2の分化には、細胞増殖抑制作用以外のRBの機能が重要であるが、その機構にはcbfa1やVDR、RARaの遺伝子発現変化の関与は少ないと思われた。現在、他のRARやretinoid X receptorファミリーのRB発現誘導による遺伝子発現の変化と、RBによる分化傾向へのVit.Dやレチノイン酸の修飾効果について解析中である。