ABSTRACT 1504(P5-14)
多発胃癌の分子病理学的研究:緒形真也、田村元、遠藤泰志、本山悌一(山形大・医・病理)
Molecular pathological analysis of multiple gastric cancer : Shinya OGATA , Gen TAMURA , Yasushi ENDOH , Teiichi MOTOYAMA (Dept. of Pathol. Yamagata Univ. School of Med.)
【目的】多発胃癌ではRER(replication error)が高率に出現することが報告されており, DNAミスマッチ修復系遺伝子の異常との関連が示唆されている. 本研究では多発胃癌の発生のおけるmutator pathwayの重要性を検証した. 【対象】外科的に切除された3病変以上を有する多発胃癌, 13症例, 35病変 (早期癌31病変, 進行癌4病変; 分化型31病変, 未分化型4病変)を対象とした.【方法】ホルマリン固定, パラフィン包埋切片より腫瘍及び正常DNAを抽出し, 4領域のマイクロサテライトマーカー(D6S265,D11S900, TP53, D18S46)をPCRで増幅し, RERとLOH(loss of heterozygosity)を判定した. さらにTGFβRII,hMSH3, BAXのframe shiftとE2F4の異常についても検索した.【結果】RERは4症例(30.8%), 7病変(20.0%)に出現した. TP53領域のLOHは4症例(30.8%), 4病変(11.4%)に検出した. RERとLOHの両者が出現する病変は認めなかった. E2F4は3症例, 5病変で (CAG)-5〜+3 の挿入, 欠失を認めた. TGFβRII, hMSH3, BAXのframe shiftは確認されなかった.【考察】多発胃癌の発生にはmutator pathwayとsuppressor pathwayが各々独立してほぼ同程度関与すると推測される. TGFβR等のframe shiftは, 多発胃癌の発生早期は未だ出現してない.